研究課題/領域番号 |
14J00155
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
大多 哲史 横浜国立大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 磁性ナノ粒子 / 磁気緩和 / ヒステリシス曲線 / がん温熱治療 / 磁性ナノ粒子イメージング |
研究実績の概要 |
次世代がん治療法である温熱治療への応用を目的として磁性ナノ粒子の発熱特性の評価を行った。従来の温度上昇よる評価では、測定環境やサンプルの状態に発熱量が影響を受けるため粒子自体の発熱特性を評価することが困難であった。本研究の測定方法は交流ヒステリシス曲線の面積から発熱量を見積もるため粒子の発熱を直接評価することが可能である。 粒子の発熱に関与する磁気緩和機構の1つに粒子自体の回転によって生じるBrownian緩和がある。Brownian緩和損失により発熱が最も効率的に発生するピーク周波数が粒子濃度によって変化すること、発熱が粒子濃度に増加に伴い減少することが示された。このことより、従来の理論式では表されていなかった粒子間相互作用(双極子相互作用)がBrownian緩和に影響を与え、相互作用が大きくなることで粒子の発熱量が減少することが明らかになった。 粒子を水中に分散させたサンプル、エポキシ樹脂により固定したサンプルに加えて、がん細胞に粒子を添加して細胞を回収することにより作製した細胞サンプルを用意して、各環境における発熱特性を評価した。従来は細胞環境における発熱量は測定手段がなく困難であったが、本研究では温度上昇測定を行うことなく発熱量を測定できるため、測定が可能となった。固定状態では、粒子自体の回転が阻害されるため液中状態よりも発熱量が減少することが示された。細胞環境下では、粒子を分散状態で固定した場合よりも発熱が小さくなることが示された。したがって細胞環境下では粒子は固定状態にあり、また細胞内外において凝集するため、粒子間相互作用が大きくなることが解明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
目的としていた細胞環境下における磁性ナノ粒子の発熱特性について定量的な評価が行えた他、理論式では考慮されていない粒子間相互作用の発熱への影響を解明することができた。また理論式を用いた数値計算や診断としての応用が可能な磁性ナノ粒子イメージングのための評価を開始することができたためである。
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今後の研究の推進方策 |
磁性ナノ粒子の発熱特性の評価に加えて、体内の粒子を画像化することで治療に用いる粒子の可視化および診断への応用が可能な磁性ナノ粒子イメージングへの応用を目的として粒子径や表面修飾方法の異なる粒子の評価を行う。また交流ヒステリシス曲線の測定結果から液中や細胞環境における粒子の回転について従来理論を基本とした数値計算結果と比較を行いことで各環境における粒子および磁気モーメントの回転機構を評価する。
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