研究課題/領域番号 |
14J00157
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坪田 庄真 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 神経芽腫 / MYCN / Spheroid culture / エピゲノム |
研究実績の概要 |
本研究は、小児腫瘍の一つである神経芽腫のマウスモデル(MYCN-Tgマウス)を用い、腫瘍発生の運命決定機構の解明を目指している。モデルマウスを用いその初期異常に着目し、さらに新しく確立した培養手法を用いて、腫瘍形成に関わる分子やそのイベントの解明に取り組んでいる。 平成26年度までの研究成果として、腫瘍形成のスタートがマウス胎児期中期(13.5日)であることを明らかにした。さらに、新たな培養手法を使いMYCN-Tg及び野生型マウスから細胞を回収し、網羅的遺伝子発現解析を行った。平成27年度は、遺伝子発現解析を主に進め、MYCN-Tgマウスにおいてエピゲノムを制御する分子の一つであるPRC2が腫瘍形成に重要ではないかという結果を得た。具体的には、野生型マウスと比較し、MYCN-Tgマウス由来の細胞ではPRC2を構成している分子(Ezh2、Eed、Suz12)の発現が有意に増加していた。一方で、そのターゲット分子のほとんどが発現減少しているということが明らかになった。PRC2が神経芽腫の発生初期における重要な分子の一つではないかと想定し、候補遺伝子群として解析を進めた。実際には、PRC2の中でも酵素活性を担うEzh2に着目し、マウス組織中の未分化状態にあるがん細胞においてEzh2が高発現していることを明らかにした。また、マウス由来の細胞を用いて阻害剤や遺伝子ノックダウンによりEzh2の機能を阻害すると、細胞増殖が著しく抑制されることが分かった。これらの結果は、Ezh2を含むPRC2の異常がMYCN-Tgマウスの神経芽腫生存に重要であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、神経芽腫の腫瘍形成初期イベントに着目しMYCN-Tgマウスの組織、及びそこからSpheroid cultureによって得られた細胞を対象に解析を進めてきた。特に、腫瘍形成の初期として着目している胎仔期13.5日(E13.5)における神経芽細胞を中心に研究を進めてきた。 1.E13.5組織から神経芽細胞を回収し、MYCN-Tgマウス及び野生型マウス由来のSphereにおける遺伝子発現パターンを比較した。Gene set enrichment analysisを行い、発現変動に寄与する上流因子群を調べた結果、当然の結果として想定していたMYC/MYCNだけでなく、エピゲノム関連分子としてPRC2(Ezh2、Eed、Suz12)が候補分子として挙がってきた。実際に、そのターゲット分子のほとんどが発現抑制を受けていることが分かった。 2.野生型マウス及びMYCN-TgマウスにおけるEzh2の発現を調べるために、E13.5、Day 0、3w SMGを対象に免疫染色を行った結果、野生型、MYCN-Tgに問わず、Ezh2は未分化状態の神経芽細胞に強く発現し、分化した神経節細胞では発現量が低いということが分かった。 3.E13.5から得られたSphereを対象にウエスタンブロッティングを行った結果、Ezh2の発現はMYCN-Tg由来の細胞で有意に増加していた。この結果は網羅的解析と一致している。 4.Ezh2阻害剤やshRNAを用いSphereの細胞増殖への影響を調べた結果、阻害剤・shRNAのどちらもSphereの増殖を著しく抑制した。阻害剤はH3K27me3活性を阻害するため、Ezh2のメチル基転移活性がSphereの維持に重要であるということが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の解析と実験結果から、PRC2(主にEzh2)を中心に今後の実験を計画している。 1.MYCN-Tgマウス由来の細胞において、PRC2やEzh2が実際にどのような遺伝子を標的としているかを明らかにするため、クロマチン免疫沈降及びシークエンスを行い、ターゲット遺伝子を同定したい。 2.Ezh2の阻害剤やshRNAの効果を確認するため、Ezh2の過剰発現実験を行い、阻害効果を解除できるか確かめたし。また、阻害剤をMYCN-Tgマウスに投与し腫瘍形成にどのような影響を及ぼすかを調べる。 3.Ezh2を含むPRC2の異常が腫瘍形成に寄与するかどうかを調べるため、野生型マウス由来の細胞にEzh2を過剰発現させ、細胞が形質転換するかどうかを確かめる。
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