研究課題/領域番号 |
14J00169
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
斎藤 翼 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 玄武岩 / 摩擦特性 / 粘土鉱物 |
研究実績の概要 |
平成26年度は四国東部牟岐メランジュの玄武岩を用いて行った摩擦実験の結果分析、実験試料の微細構造観察を行った。牟岐メランジュでは、玄武岩は脆性的な剪断変形を被っており、地震すべりの証拠も見つかっている。この地震すべりの証拠が見出された露頭から、玄武岩起源ウルトラカタクレーサイト、玄武岩起源面状カタクレーサイト、およびそれらの母岩(枕状玄武岩)を摩擦実験用試料として採取した。それらの摩擦特性を検討するため、回転式せん断摩擦試験機を用いて、低速域での速度急変実験と高速摩擦実験を行った。 速度急変時の過渡的な挙動を比較すると、枕状玄武岩は負の速度依存性を示す一方、面状カタクレーサイトとウルトラカタクレーサイトは速度強化する挙動を示した。高速摩擦実験では全ての試料が実験開始直後にピーク摩擦係数に到達した後、すべり弱化し、低速時に比べて低い摩擦係数となった。ピーク摩擦係数はウルトラカタクレーサイトが最も低く(0.26ー0.29)、対照的に枕状玄武岩と面状カタクレーサイトは高い値を示した(それぞれ0.49ー0.57、0.6ー0.75)。また、枕状玄武岩とウルトラカタクレーサイトはすべり弱化距離が非常に短いが、面状カタクレーサイトはそれらに比べて長い傾向がある。XRD解析と微細構造観察の結果、速度弱化を示した試料は粘土鉱物に乏しく(21 wt.%)、粉砕に伴う粒子の細粒化が見られた一方、速度強化の挙動を示した試料は粘土鉱物により富んでおり(29ー50 wt.%)、せん断帯に沿った粘土鉱物の配列が認められた。これらの結果は、海洋地殻を構成する枕状玄武岩は不安定すべりの発生ポテンシャルを有するが、断層岩形成に伴ってすべりが安定化することを示唆する。高速摩擦実験の結果は、ウルトラカタクレーサイトにおいて、地震破壊が伝播しやすいことを示している。このことは、ウルトラカタクレーサイトにおいて地震性すべりの痕跡が認められることと調和的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
九州東部槙峰メランジュにおいて優良な断層露頭が見つからないことが原因である。当初の予定通り先行研究に基づき現地性玄武岩と認定された露頭の再調査を行ったが、四国東部の牟岐メランジュ中の現地性玄武岩と報告された玄武岩とはあまりに異なる産状をしていた。以上の理由により、玄武岩中に発達している断層帯において地震すべりの痕跡を見出せずにいるため、その後の実験にも進めずにいる状態である。
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今後の研究の推進方策 |
九州東部、五ヶ瀬川流域に分布する槙峰メランジュの玄武岩中に発達する断層帯において地震すべりの痕跡が認められないは、最高到達条件が400˚C、3.5kbar(深度13.5 kmに相当)と地震発生深度下限域に位置するため、地震すべりが起きておらず、深部低周波微動などのようなスロー地震域になっている可能性がある。加えて、調査の結果、流体の関与を示唆する組織が見られたため、地震すべりの痕跡が流体の流入により消されている可能性もある。平成27年度は調査範囲を拡大し、九州東部、大分県海岸域に分布する槙峰メランジュ(最高到達温度350˚C)にて調査を行い、新たな地震すべりの候補を発見し、そこから地震すべりの痕跡が見出されるかを検討する必要がある。
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