研究課題/領域番号 |
14J00223
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
平川 翼 広島大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 内視鏡画像認識 / NBI内視鏡 / 領域分割 / Tree of shapes |
研究実績の概要 |
今年度は申請書に記述した通り,フランスのパリ東大学(ESIEE)に長期滞在し内視鏡画像全体を認識するための手法の開発に従事した.前年度に,医師によってラベル付けされた大腸画像を用いて学習した識別器の出力する事後確率をマルコフ確率場(MRF)に使用し,大域的最適解を求めることで領域分割を実現する手法を提案している.しかし,この手法の結果は十分な精度を実現してるとは言えず,さらなる改善が必要だと考えられる.内視鏡画像の領域分割を実現するため,画像の輝度値の包含関係を木構造で表す表現方法を用いた領域分割手法の開発を行った.この木構造中の各ノード(それに対応する画素群)から輝度や形のパターンを抽出し,それらを特徴量として使用する.これらの特徴量は照明条件や形状変化などのノイズに不変な特徴量とされるため,上記の問題点であるノイズに不変な識別が可能だと期待出来る.この特徴量を用いて木構造の各ノードを識別することで領域分割を図った.具体的にはToS上の各ノードを識別し,その識別結果をノードに対応する領域に割り当てることで領域分割を行った.その際,レベルの低いノード,すなわち葉に近いノードでは,識別のための十分な特徴量を求めることができないため,一定のレベル以上のノードのみを識別し,その結果を子ノードに反映させている.しかし,木構造が画像をうまく表現できていない場合には間違った分割結果が求められてしまうため,さらなる改良が必要である. また分割手法の評価のためのデータセット作成も同時に行った.既存のデータセットでは,画像中から医師が切り取りラベル付けした矩形領域の情報しかなかったが,今回作成したデータセットでは,背景や正常な大腸壁等のラベルを追加したデータを作成したため,より詳細な評価を行う事が可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は,前年度の研究内容をまとめ英文論文誌に投稿し採択された.また,平成28年度に行う予定で会った内視鏡映像をリアルタイムに処理し識別するためのシステムに関する論文も投稿中である.しかし,現在の研究内容である領域分割手法の開発が当初の予想よりも難しい対象である事が判明した.原因を特定し,手法の詳細に評価するために,領域分割用の新たなデータセットも作成した.そのため,当初の予定よりやや遅れていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
診断支援のためのアプリケーションの開発については,前年度までの研究によって内視鏡映像をリアルタイムに処理し,診断結果を表示するためのシステム開発がすでに行なわれている,また,その内容に関する論文も既に投稿している. そのため平成28年度は引き続き,領域分割手法の開発を行いその効果を確認する.現在までの研究で,木構造を用いたアプローチでは,画像サイズ,すなわち木構造のサイズが変化すると,識別に大きな影響を及ぼす事が判明している.内視鏡画像では,学習用の画像と領域分割の対象となる画像でサイズが異なっている.そのため,本研究ではその問題を改善し,領域分割の精度の向上を図る.具体的には,学習と識別の際の画像サイズが異なった場合でも識別性能を発揮するような特徴量を提案する.その後,その特徴量を用いて領域分割の性能を評価する.
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