研究課題/領域番号 |
14J00318
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
上條 菜美子 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 意味づけ / 侵入的熟考 / 意図的熟考 / 反すう / ストレスフルな出来事 / 感情 / 実行機能 |
研究実績の概要 |
本研究では,意味づけのメカニズムについて解明するため,以下の研究を実施した。 研究1では,過去に体験したストレスフルな出来事を対象に,出来事に対する認知および体験当時と現在の反すう(侵入的熟考・意図的熟考)が意味づけに及ぼす影響について検討した。その結果,体験当時,出来事の価値や重要性を見出そうと積極的に反すうすると,それが出来事に対する肯定的再評価や,個人の信念の肯定的変化に結びつくことが示された。また,現在,侵入的熟考の頻度が高い場合,自己の認知や信念を否定的に変容する意味づけが行われやすいことも示された。しかし一方で,体験当時の意図的熟考と現在の侵入的熟考に正の関連がみられたことから,出来事と積極的に向き合い,その意味や価値を探索することは,常に適応的な対処であるとは限らない可能性が示唆された。従来の知見を踏まえると,出来事の種類や苦痛の強度によって,意味探索の適切なタイミングは異なると推察される。 研究2では,出来事に対する認知,反すう,意味づけの時系列的変化について検討するため,3時点における縦断面接調査を行う(現在実施中)。 研究3では,感情的側面に焦点を当て,感情の種類とその頻度が意味づけ過程に及ぼす影響について,場面想定法による質問紙調査を実施した。分析の結果,後悔や罪悪感など,自己の行為を悔やんだり,否定的に評価したりすることで生じる感情は,意味づけを促進することが示された。一方,無気力や無希望を示す感情(絶望や悲しみなど)は,侵入的熟考を促し,意味づけを抑制することが示された。以上から,ストレスフルな体験によって生じるネガティブな感情であっても,その質によって,意味づけを促進することもあれば,逆に意味づけを抑制する場合があることが示唆された。 これらの研究から,意味づけ過程における反すうの役割とその予測要因が一部明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時,年次計画として採用1年目に二つの研究の実施を予定していた。その結果,平成26年度は,研究1(回顧法による質問紙調査)を遂行し,結果をまとめた論文を学術誌に投稿,現在審査中である。 研究2(縦断面接調査)は,予定しているサンプル数の半分が終了した状態である。採用2年目の前半でデータ収集を終了し,終わり次第結果をまとめる作業に移行する予定である。 また,採用2年目に実施を予定していた三つの研究のうち,一つ目の研究(研究3)が終了し,採用2年目の前半には研究4の調査を開始する目処が立っている。 以上の点を踏まえると,研究の遂行状況はおおむね良好であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
採用2年目は,年次計画通りに研究を遂行する予定である。 まず研究4では,ストレスフルな体験に対する認知,感情,および社会的環境が,反すうと意味づけに及ぼす影響について,回顧法による個別式の質問紙調査を実施する。研究1と同様,体験当時と現在の2時点について測定する。また,これまで自己報告式の尺度で測定してた実行機能は,神経心理学的測定法を用いてより客観的に測定を行う予定である。 次に研究5では,出来事に対する認知,感情,反すう,意味づけの時系列的変化について面接調査により検討する。研究2では,第1回目の調査と2回目の調査の間隔を2週間,2回目と3回目の調査の間隔を4週間とそれぞれ空けたが,研究5での調査のタイミングについては,研究2の結果を踏まえて決定する。なお,縦断調査であるため,データ収集は採用3年目にも行う予定である。 また,申請時に提出した研究計画(研究4,研究5)に加え,研究3において検討したモデルの妥当性を確認するため,回顧法による集団配布集団収集式質問紙調査を実施し,研究3の結果との一致性についても議論する予定である。
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