研究課題
褐藻類に含まれるアルギン酸はα-L-グルロン酸とβ-D-マンヌロン酸の二つの糖から成る酸性多糖体である。本研究により,アルギン酸分解酵素であるアルギン酸リアーゼにより得られる低分子化アルギン酸オリゴマーはクラミドモナスに対し,増殖促進を示し,細胞周期に関わるサイクリン遺伝子を活性化させることを明らかにした。さらに,銅イオンによる重金属ストレスの生育不良の改善効果を明らかにした。アルギン酸オリゴマーは銅イオンによって引き起こされる細胞内活性酸素の上昇を抑え,さらに,SODやAPXなどの抗酸化酵素を活性化することにより,銅イオンストレスを軽減することを見出した。以上の結果から,アルギン酸オリゴマーのクラミドモナスに対する新たな生物活性を見出した。赤潮プランクトンの一種であるラフィド藻綱に属するシャットネラ(Chattonella antiqua)は強い魚毒性を有し,特にブリに対し魚毒性が強く,養殖業に甚大な漁業被害をもたらしている。シャットネラは活性酸素を放出しており,この活性酸素が魚類のエラを損傷させ,斃死させる毒性機構が提唱されている。これまでの報告により,活性酸素消去剤である安息香酸ナトリウムを添加することによりシャットネラに対し,感受性の高いルリスズメダイの魚毒性を抑制することを明らかにしている。一方で,アルギン酸オリゴマーはシャットネラに対し直接的な影響は無いが,マダイ稚魚を用いた暴露実験でシャットネラの魚毒性を部分的にではあるが軽減する事を見出した。アルギン酸オリゴマーは抗酸化活性を有するがその活性は低いため,おそらくマダイ稚魚のエラを保護しているか,シャットネラ細胞表面に結合する事によりエラへの接触を抑制していることが推察された。加えて,色落ちスサビノリに含まれる硫酸化多糖体ポルフィランは,LPS投与マウスのショック症状を改善することも見出した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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