研究課題/領域番号 |
14J00367
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
野口 隆明 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
キーワード | 幹細胞 / 発生生物学 / がん |
研究実績の概要 |
本研究は、多能性幹細胞から成熟した胃組織を分化誘導し、その中で胃がん病態モデルを作製することを目指したものである。
多能性幹細胞の腸原基構造への分化誘導系を改善し、胃原基構造を効率よく分化誘導可能な培養条件を胃分化マーカーを指標にしてスクリーニングした。その結果、腸の分化を抑え、胃の分化を促進する成長因子を2種類同定した。さらに、これらの成長因子が濃度依存的に胃原基構造を誘導しうることを突き止めた。また、この胃原基構造を長期に三次元培養することで、発達した胃腺を持つ胃組織構造を分化誘導することにも成功した。この胃腺からは、胃の機能的な細胞や消化酵素の分泌が確認できた。以上のことから、多能性幹細胞から胃組織を分化誘導することに成功した。また、この胃組織構造に胃がん遺伝子を導入することで、培養胃組織の中で腫瘍様の構造を誘導する実験も行った。これにより、分化誘導した胃組織が、実際の胃がん病態モデルとして利用できる可能性を証明しつつある。
今後は、ヒト多能性幹細胞から胃組織の作製を行い、ヒト胃がん病態モデルの作製を目指す。これまでの分化誘導方法と同様に、ヒト多能性幹細胞に同定した2種類の成長因子を加え、長期培養を行うことでヒト胃組織の作製を試みる。さらに、ヒト多能性幹細胞に胃がん遺伝子を導入し、ヒト胃がん病態の再現にも挑戦する。本研究によって、多能性幹細胞から胃組織への分化誘導方法を樹立するのみならず、その病態モデルへの応用を示すことで、分化誘導胃組織が実際の胃がん創薬へと繋がりうることを今後も証明していきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、多能性幹細胞から胃組織を分化誘導し、胃がん遺伝子を用いて胃がん病態モデルを作製することである。これまでの研究から同定した胃分化マーカーを用い、胃組織を効率良く分化誘導する培養条件の同定に成功した。さらに、分化誘導した胃組織に胃がん遺伝子を過剰発現させることで、胃がん病態様の再現にも成功しつつある。
当初の研究目的である、多能性幹細胞からの胃組織の分化誘導をほぼ達成し、加えて胃がん病態モデルの作製についても成功間近であることから、おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、ヒト多能性幹細胞から胃組織の作製を行い、ヒト胃がん病態モデルの作製を目指す。これまでの分化誘導方法と同様に、ヒト多能性幹細胞に同定した2種類の成長因子を加え、長期培養を行うことでヒト胃組織の作製を試みる。さらに、ヒト多能性幹細胞に胃がん遺伝子を導入し、ヒト胃がん病態の再現に挑戦する。
万が一、ヒト多能性幹細胞の分化誘導に問題があった場合、マウス多能性幹細胞型のヒト多能性幹細胞(ヒト基底状態多能性幹細胞)を樹立することで、分化誘導の改善を図る。本研究によって、多能性幹細胞から胃組織への分化誘導方法を樹立するのみならず、その病態モデルへの応用を示すことで、分化誘導胃組織が実際の胃がん創薬へと繋がりうることを今後も証明していきたい。
|