研究課題/領域番号 |
14J00368
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
大西 響子 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ブラックホール質量 / 銀河進化 / 国際研究者交流 / イギリス |
研究実績の概要 |
銀河進化のプロセスを解明する事は、近代の天文学において最も重要な課題のうちの一つである。近年では、ほぼ全ての銀河中心に超巨大ブラックホールが存在することが明らかになってきている。また、ブラックホール (Black Hole: BH) 質量とそれを含む銀河(母銀河)の基本的な物理量(銀河全体の明るさや星質量、星の速度の分散値など)との間に強い相関がある事も観測と数値シミュレーションの両方から知られはじめている。この二つの事実は銀河とブラックホールが互いに影響を及ぼし合いながら成長してきた事を示唆しており、銀河進化の解明の示準となる物理量として BH 質量が注目されている。 本研究では、近傍銀河で観測できる分子ガスの運動を使って力学的に BH 質量を求める手法を確立し、より多くの天体で BH 質量を導出する事を短期的な目的としている。平成26年度にはアタカマミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)を用いて近傍銀河 NGC 1097 を観測したデータを使い、重力ポテンシャルのモデルから導かれた速度場とのフィッティングを行って BH 質量を導出した。また、この結果とそれに至るまでの議論を論文にまとめ、投稿した(Onishi et al. 2015)。これにより、近年の電波干渉計によって観測される分子ガスの速度場から BH 質量が導出可能である事を示すことができた。また、この手法における問題点や改善すべき箇所を指摘し、さらにこの手法が晩期型銀河におけるBH 質量の導出においても有用であることを世界で初めて報告した。 さらに、我々に対して先行研究を行った研究グループのメンバーの一人である、イギリス・オックスフォード大学の Martin Bureau 氏のもとを2014年9月-11月と2015年1月-3月の二回に分けて訪れた。本研究に関する共同研究として、新たに近傍銀河 NGC 3665 について同様の手法を用いて BH 質量の導出を行い、モデルの改良などについて議論をしながら投稿論文にまとめる準備をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、近傍銀河 NGC 1097におけるアタカマミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)によるブラックホール (Black Hole: BH) 質量の導出研究に関する論文を投稿し、ほぼ受理されるところまで達成することができた。この研究と、先行研究で近傍銀河 NGC 4526 の BH 質量を導出した Davis et al. 2013 の二つにより、分子ガスの運動学を使って BH 質量を求める手法が複数の天体について適用可能である事が示された。また、本手法に関して改善すべき点や結果のエラーを大きくする要因などの議論は申請者の投稿した論文 (Onishi et al. 2015) において世界で初めて論じられている事から、申請者は本手法の確立を行ったと言える。さらに、本研究に関する発表を4つの国際研究会と1つの国内研究会で行っており、様々な研究者に成果を知ってもらうと共に、多様な議論を交わすことができた。 また、先行研究を行ったグループのメンバーであるイギリス・オクスフォード大学の Martin Bureau 氏と共同研究を開始する事ができ、近傍銀河 NGC 3665 における分子ガスの運動学から BH 質量を求めた。平成26年度中に論文を投稿するには至らなかったが、より議論を深めた論文を現在作成中である。この研究に関しては、2015年3月16日から19日までの間オックスフォードで開催された、SMBH Workshop「超大質量ブラックホール・ワークショップ」にて発表を行った。ワークショップ期間中にブラックホール質量の導出に関する研究を推進している世界的な研究者たちと多方面からの議論を展開し、今後の研究に関するアイデアを得る事ができた。 以上の点を踏まえて、研究は計画通り進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
銀河とブラックホール(Black Hole: BH) の共進化の指標とされている、BH 質量と母銀河の物理量(銀河全体の明るさや星質量、中心部分の速度分散など)との相関関係をさらに明らかにする目的で、分子ガスの運動学を使ってより多くの銀河中心の BH 質量を導出する事が、本研究の短期的な目標であった。平成26年度は、BH 質量導出法として比較的新しい手法である、分子ガスの運動学を使って BH 質量を求めるという手法の確立を行った。 今後は、より多くの天体について同手法を適用し、 BH 質量を求めていく。同時に、分子ガスの運動学をより詳細に調べ、個々の天体に関してさらに正しい BH 質量にせまるため、速度場を計算するモデルやフィッティング方法の改良を行う。また、最終的には BH 質量と母銀河の中心部分の速度分散との相関関係(M-σ関係)の中に本手法から求められたデータをプロットし、関係式の中で近年見え始めている、銀河の種族や形態による式の違いについて議論する。 具体的な推進方策として、申請者はアタカマミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)に対し複数の近傍銀河の観測を筆頭著者または共著者として提案しており、観測されたデータを解析して BH 質量を求める。 現段階では計21天体の観測が提案されており、全てが受理されれば、現段階で他の手法を使って BH 質量が力学的に求まっている天体数のおよそ4分の1が新たにM-σ関係のプロットとして追加されることとなる。また、データ解析やモデルフィッティングの最適な方法は天体によって少しずつ異なる事から、これらの天体について、より正確な解析法とよりよいフィッティング法をグループの中で議論していく事により、本手法をさらに発展させる事が出来る。 また、 ALMA の観測で、提案は受理されたもののデータの配達がされていない観測もあり、今後それらのデータについても解析と質量導出を行う。
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