今年度は、昨年まで取り組んでいたParasoRを用いてin silico構造予測とin vitro/vivo構造予測との比較による、さらなる二次構造予測の精度向上を目指した。我々の解析によって、in vitro/vivoでのハイスループットプロービング解析から得られたRNAの反応性(リアクティビティ)の値を利用した構造予測は、カバレージの低い領域においてはシーケンシングのプロセスにおいて生まれるノイズの影響を強く受けてしまう。このような領域をとりのぞき予測精度を向上させるために、レプリケイト間での再現性を考慮して高精度にRNAのリアクティビティを推定する手法reactIDRの開発を行った。reactIDRにより推定されたリアクテビティを特徴量として構造予測を行う機械学習分類器の構築を行い、18S rRNAの既知構造や転写物全体に対してParasoRによるin silico予測をもとに学習させたところ、高い予測精度を示すことがわかった。将来的には既存の予測モデルに含まれない遠距離の塩基対や、三次構造の影響などを検出などに応用していくことが可能になるのではないかと期待される。本研究結果については追加解析とともに、論文誌に投稿予定である。 加えて、昨年度シンシナティ大学においてRNAの塩基の一つであるGTPが生体内、特にがん細胞内で果たす働きに関して、バイオインフォマティクス的な側面から研究を行ったが、今年度はそれらの継続的な研究を行い、その一部を現在実験の結果とあわせて論文として投稿中である。GTPの産生効率の変化はmRNAの転写や翻訳効率と関連があると考えられ、RNAの転写後制御解析に新たな視点を与えられるのではないかと考えている。
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