研究課題/領域番号 |
14J00404
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小島 理恵子 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / カルジオリピン / トランスロケータ |
研究実績の概要 |
今年度は,ミトコンドリア内膜トランスロケータチャネルであるTIM23複合体のメンテナンスを担い,カルジオリピン(CL)の合成に関わっているTam41の結晶構造解析に向けて,大量調製法の構築を目指した.まず,様々な生物種(出芽酵母種,哺乳動物種)由来のTam41をクローニングし,全長およびプレ配列やフレキシブルと予測される領域を切除したコンストラクトを作製し,収量が期待される大腸菌発現系を用いて可溶性画分からの発現・精製を検討した.いずれのコンストラクトも発現が確認できないか,不溶性画分に発現していたため,不溶性画分に発現したコンストラクトについて,アルギニンを用いたリフォールディングおよび界面活性剤を用いた膜画分からの可溶化を検討したが,うまくいかなかった.現在出芽酵母のTam41についてバキュロウイルス-カイコ発現系を試している.現時点では発現は確認できていないが,今後,コンストラクトの長さや,注射するバクミドの量を変えるなど検討していく予定である.また,CL合成に関わる酵素群のうち,Tam41以外についても大量調製法の構築を目指した.Tam41の次の反応を担うPgs1(PGP合成酵素)については,大腸菌膜画分からの可溶化および精製に成功し,再現性のある微結晶を得られた.PGPホスファターゼであるGep4についても,大腸菌可溶性画分からの大量調製法の確立に成功し,微結晶を得ている.今後これらの結晶構造決定に向けて,沈殿剤の濃度やpH,コンストラクトの長さや基質の有無による結晶化条件の最適化を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルジオリピンの合成に関わる酵素群の構造解析に向けて,ミトコンドリア内膜タンパク質であるTam41 (CDP-DAG酵素), Pgs1 (PGP合成酵素), Gep4 (PGPホスファターゼ) の3つの酵素をターゲットとして大量調製系の確立を目指した.Tam41は大腸菌発現系を用いた大量調製がうまくいかなかったため,バキュロウイルス-カイコ発現系を検討中である. Pgs1とGep4に関しては大腸菌発現系を用いた大量調製に成功し,さらに結晶化一次スクリーニングにおいて再現性のある微結晶を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は優先的に,微結晶が得られているPgs1とGep4について結晶化条件の最適化を行い,結晶構造決定を目指す.まずはpHや沈殿剤の濃度を検討する,現在得られている微結晶を使ったシーディングを試すなどし,良質な単結晶を成長させる方法を探す.結晶が成長しない場合は,フレキシブルだと予測される領域を除くことによるコンストラクト最適化や,基質存在下での結晶化を試す.良い結晶が得られれば,セレノメチオニン標識体の精製・結晶化も行い,放射光施設にてX線回折実験を行う.Tam41に関しては,バキュロウイルス-カイコ発現系に加えて出芽酵母発現系も検討し,結晶化に適した発現系構築を目指す.
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