研究課題/領域番号 |
14J00428
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石丸 友博 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | タンパク質アルギニンメチル基転移酵素 / PRMT1 / 組織特異的欠損 / 血管内皮細胞 / 胎生致死 |
研究実績の概要 |
妊娠には、母体-胎児間の物質交換の要である胎盤の形成や、妊娠中の正常血圧の維持といった、「血管」の機能が特に重要である。そのため、血管機能の破綻は、重篤な妊娠時疾患を引き起こすと考えられるが、妊娠時における血管機能の制御因子は全く明らかにされていない。当研究室の先行解析において、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞にて、タンパク質アルギニンメチル基転移酵素・PRMT1をノックダウンすると、管腔形成が促進されることが明らかとなり、血管内皮細胞において、PRMT1が血管の構造や機能の制御に重要である可能性が示されている。しかし、PRMT1の全身欠損マウスは、胎生初期に致死となることが報告されており、生体におけるPRMT1の機能は殆ど明らかにされていない。そこで、本研究では、血管内皮PRMT1の生理的な意義を明らかにするとともに、妊娠時疾患との関わりについて検討することを目的とした。そこで先ず、Cre-loxPシステムを用いて血管内皮細胞特異的にPRMT1を欠損するマウス(PRMT1-ECKO)を作製したところ、ホモのPRMT1-ECKOマウスは、胎生14日目から15日目にかけて致死になることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、タンパク質アルギニンメチル基転移酵素・PRMT1に関して、血管内皮細胞における生理機能を明らかにするとともに、妊娠時疾患との関わりについて検討することを目的としている。平成26年度の解析から、PRMT1-ECKOマウスが、胎生15日までに致死となることを明らかにした。このことは血管内皮細胞において、PRMT1が正常な胎仔発生に重要であることを示している。胎仔の正常発育には、胎仔自体の血管形成に加えて、胎盤の血管リモデリングも重要であり、これら妊娠時イベントへの血管内皮PRMT1の関与が考えられる。昨年度の成果は、これまで未知であったPRMT1の生理的な意義を示す重要な知見である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、PRMT1-ECKOマウスが胎生致死となることを明らかにした。そこで本年度は、PRMT1-ECKOマウスの死亡原因を特定するため、胎仔や胎盤における詳細な血管の構造解析を行う。その際に、多光子顕微鏡を用いた胎仔や胎盤全体の血管構造の3次元構築にチャレンジする。既に昨年度、Cre発現部位で蛍光が緑色から赤色へと変わるCreレポーターマウス(R26GRRマウス)を導入し、PRMT1-ECKOマウスと交配することでR26GRR/PRMT1-ECKOマウスの作製に成功している。そこで、このマウスを用いて、血管内皮PRMT1の有無による血管構造の違いを評価する予定である。また、組織病理学的・生化学的解析を行うことにより、胎仔発生期における血管内皮PRMT1の生理的意義について明らかにする。 血管内皮PRMT1と妊娠時疾患との関わりについては、PRMT1-ECKOマウスが致死となったため、当初の計画通り妊娠高血圧マウスにおける血管内皮PRMT1の欠損に向けて、薬剤投与によってPRMT1が欠損する誘導型血管内皮PRMT1欠損(PRMT1-iECKO)マウスを用いることにした。これまでに、妊娠高血圧マウスの作製に必要なヒトアンジオテンシノーゲン過剰発現(hAG)マウス、及び、ヒトレニン過剰発現(hRN)マウスに対し、PRMT1-iECKOマウスを交配することにより、PRMT1-iECKO/hAGマウス、及び、PRMT1-iECKO/hRNマウスの作製が完了している。今年度は、これらマウスを交配することで、PRMT1-iECKO/妊娠高血圧マウスを作製し、胎仔・胎盤の病態解析や、母体の病態変化を検討することで、血管内皮細胞におけるPRMT1の機能と妊娠時疾患との関連を明らかにする予定である。
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