研究実績の概要 |
繊毛/鞭毛軸糸内腕ダイニンの規則的周期性を規定する因子決定の手掛かりを探るため、今年度は2本の鞭毛を持つ単細胞緑藻クラミドモナスの内腕ダイニン欠損変異株pf23の遺伝学的・生化学的・構造学的な解析を主として行った。pf23株は鞭毛軸糸に存在する7種 [a, b, c, d, e, f, g] のメジャー内腕ダイニン種のうち、4種 [a, c, d, f] を欠損する変異株として30年以上前に報告された(Huang et al., 1979. J Biol Chem 254(8):3091-3099)。遺伝学的な解析から、pf23株の原因遺伝子は意外なことに細胞質性のタンパク質をコードするもので、このタンパク質は細胞質内での内腕ダイニンの集合に必要であるらしいことが分かった。また、pf23株鞭毛軸糸の生化学的な解析により、pf23株は内腕ダイニンだけではなく、鞭毛外腕ダイニンにも軽微な欠陥を持つこと、ならびにpf23株鞭毛軸糸では内腕ダイニン種 [a] 以外のほぼ全てのメジャー内腕ダイニン種が大幅に減少していることを示唆する結果を得た。クライオ電子顕微鏡観察法とサブトモグラム画像平均法を用いたpf23株鞭毛軸糸の構造学的解析から、低解像度ではあるが、pf23株の内腕ダイニンの欠損を可視化することが出来た。今後は、構造学的解析を更に続け、高解像度で各種内腕ダイニンと繊毛/鞭毛軸糸微小管の結合部位構造を決定することで、内腕ダイニンの規則的周期性を規定する因子の実体に迫りたいと考えている。
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