研究課題
鹿児島県肝付町の内之浦漁港、笠沙町の笠沙漁港、種子島の3定点からハタンポ属魚類を経月的に収集した。標本を研究室に持ち帰ったのち、体長、体重を測定し、生殖腺の外観から雌雄を判別した。その後、各月に最大でも50個体を解剖し、生殖腺の重量から種、月、採集場所毎に生殖腺指数を算出した。また取り出した耳石を琉球大学で解析し、各個体の年齢を明らかにした。その結果、一昨年度までの研究で明らかになった沖縄島におけるミナミハタンポの産卵期と比べ、種子島での産卵期は短く、夏季に近づき、笠沙・内之浦ではそれがより顕著になることが明らかになった。また、年齢も鹿児島本土のものが沖縄島と比べてより高齢であることも示された。宇治群島、奄美大島、喜界島、小笠原諸島母島・父島、口之島、与那国島、マレーシア(クアラトレンガヌ・ビドォン島、ボルネオ島)、上甑島、徳之島、内之浦(毎月1~3回)の魚類の採集調査をおこない、3000個体以上の標本を採集した。これらの過程で、与那国島で採集したメギス科が日本からの標本に基づく初めての記録となったとともに、いくつかの種を鹿児島本土やトカラ列島、奄美大島、沖縄島からの初記録として発表された。与那国島において5大学合同で魚類相調査を実施した。調査では、県や町などの行政との事前調整を含め、これまでに自身が参加するだけの立場では学ぶことが出来なかった大人数を動かすためのノウハウを学ぶことができた。また、共通の目標をもったフィールド調査を通じて、大学間の壁を越えた技術的、人間的交流をおこない、同じ舞台で研究する研究者間の信頼関係を築くことができた。このような背景もあり、参加者全員が高いモチベーションで調査を完遂し、わずか1週間の調査で約400種の魚種を採集するにいたった。
1: 当初の計画以上に進展している
研究開始当初は、鹿児島のハタンポ科魚類にのみ焦点をあてた研究を実施する予定であった。しかしながら、鹿児島大学においては、鹿児島県のみならず与那国島や小笠原諸島といった琉球列島の広域やマレーシアやフィリピンなど海外にまで広く調査を行う機会に恵まれており、想定よりもはるかに広大なフィールドを舞台とした研究活動をおこなうことができている。また、魚類相研究をはじめとして、ハタンポ科魚類のみならず、他の海産魚類を広く対象とした研究活動を展開する機会が多く、想定していた以上に大きな実績と経験を得ることができている。
昨年度まで収集した標本をもとに、解析を中心とした研究活動を展開する予定である。また、これまで調査を実施していなかった甑島列島や台湾での調査を実施し、さらなる標本の集積を遂行する。また、これまでに得たデータのうち、現在までに出版されていないデータを可能な限り論文にする予定である。
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すべて 雑誌論文 (17件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 16件、 謝辞記載あり 17件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件) 図書 (2件)
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