研究課題
植物ではゲノム上の特定の遺伝子配列を改変することは従来困難であったが,近年開発されたTALEN (Transcription Activator-Like Effector Nuclease) やCIRPR/Casシステムなどの人工ヌクレアーゼを用いることで標的遺伝子への変異導入が可能となった.植物育種におけるゲノム編集の有用性が予想される一方,ゲノム編集の植物への適用例が少ないこと,一過的にではあるが外来遺伝子を対象とする植物細胞に導入する必要があることなどが問題となり,実用化があまり進んでいない.本研究では,人工ヌクレアーゼによる植物ゲノム育種を実用化に結びつけることを目的としている.具体的には,1) 植物細胞内でのCRISPR/Casシステムの構築による効率的な植物ゲノム編集の検討,2) TALENタンパク質の植物細胞への輸送による,標的遺伝子の改変を目指した.2014年度の成果として,高活性型として知られるPlatinum Gate型のTALENを植物細胞内で発現可能なバイナリーベクターを簡便に作製可能なベクター構築系を作製した.本系で構築したベクターをAgrobacterium法によってシロイヌナズナに導入したところ,標的遺伝子への変異導入が示唆される結果が得られた.植物発現用CRISPR/Casベクターについては植物用にコドンが最適されたベクターを入手し,シロイヌナズナの遺伝子を標的配列とする発現ベクターを構築した.また,Platinum TALENタンパク質を大腸菌内で発現させ,抽出・ニッケルカラムによる精製を行い,植物への人工ヌクレアーゼタンパク質導入実験の準備を整えた.
2: おおむね順調に進展している
当初植物用にコドンを最適化したCas9遺伝子を人工合成する予定であったが,植物用CRISPR/Cas9 ベクターを入手することができたため,合成は行わなかった.これによって,当初の計画通り今後の研究に必要となる CRISPR/Cas9, TALEN それぞれの基本的な植物発現用ベクター構築系を立ち上げることができた.また,植物細胞に導入するための粗精製TALENタンパク質を必要量調整することができ,来年度以降の研究の準備が整った.したがって,概ね順調に進捗している.
植物細胞を用いた人工ヌクレアーゼ活性評価系を用いて,作製したTALEN, CRISPR/Cas システムの活性評価を行い,植物細胞におけるこれらの人工ヌクレアーゼの特性を明らかとする.同時に,大腸菌を用いて調整したTALENタンパク質を植物細胞に導入し、標的遺伝子への変異誘導が可能かどうかを確認する.また,研究の過程で得られた変異体植物について学会発表,論文投稿を行う.
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
The Plant Cell
巻: 26 ページ: 3763-3774
http://dx.doi.org/10.1105/tpc.114.130096