研究課題/領域番号 |
14J00566
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
村井 大介 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
キーワード | 地理歴史科 / 公民科 / ライフヒストリー / 教師 / 教科観 / 教育課程 / 教科史 / 教育言説 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、地理歴史科・公民科を担当してきた教師が、教育課程の変容を自身のライフヒストリーの中でどのように意味づけ、教科観を形成する際にどのような影響を受けてきたのかを明らかにすることである。地理歴史科・公民科(前身の高等学校社会科を含む)と関連の深い教育課程の改訂には、科目「現代社会」が成立した事象と、高等学校社会科が分化し地理歴史科と公民科が成立した事象がある。 研究の1年目にあたる平成26年度は、教育課程の改訂の中でも1989年に高等学校社会科が地理歴史科と公民科に分かれた事象を中心に探究した。今年度の主な研究成果は、以下の3点である。1、高等学校社会科が分化した事象について、1980年代の教育言説と現在の教師のライフヒストリーの中での意味づけを対比することにより、教科の改編が実際に教師の教科観とアイデンティティに与えてきた影響を明らかにした。2、高等学校社会科が分化した事象との関連も含めながら、地理歴史科を主に担当してきた教師の教科観の特徴とその形成要因を明らかにした。3、歴史哲学や物語の哲学に関する議論を参照しながら、教師のライフヒストリーの語りに着目した研究が、教科教育に持ち得る意味について考察を深めた。 高等学校社会科が分化した事象は、これまで顧みられることはあまりなかった。教師の語りから教科の改編が教師に及ぼす影響を明らかにした上記の研究成果は、教育言説や教科のポリティックスにおける教師の位置づけを問い直し、教科と教師の関係を捉える上で意義がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、1989年に高等学校社会科が分化して地理歴史科と公民科が成立した事象が、教師に与えてきた影響をライフヒストリーから明らかにし、研究成果を学会での口頭発表や学会誌への投稿論文を通して公表した。また、教師のライフヒストリーの語りに着目した研究が教科教育に持ち得る意味について考察を深め、2年目に研究を体系化する上での手掛かりを得た。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の2年目は、1978年の学習指導要領改訂の際に科目「現代社会」が成立した事象が、どのように意味づけられているかを、教師のライフヒストリーから明らかにする。その際に、教師の所属する教育団体の果たしてきた役割にも着目しながら、新設科目に教師がどのように向き合ってきたかを分析する。 最終的には、1年目に探究した教科の分化という事象と2年目に探究する科目の誕生という事象の二つを総合しながら、教育課程の変容が教科観を形成する際に地理歴史科・公民科教師に与えてきた影響を明らかにする。以上のことを通して、教師のライフヒストリーの語りから教科を捉え直すことで得られる知見を提起する。
|