2年度目の研究成果として、教師が、科目「現代社会」の成立という教科教育史上のインパクトに如何に向き合い、新設科目を如何に捉えて実践しようとしてきたのかを、二つの教育団体の活動に着目しながら明らかにした。具体的には、二つの教育団体の機関誌における「現代社会」に関する記述の変遷と、現在の教師のライフヒストリーの中での意味づけを分析した。その結果、団体間で、「現代社会」の実践を個人で探究するか組織で探究するか、「現代社会」の成立を肯定的に捉えるか否定的に捉えるかといった相違がみられた。このように「現代社会」の成立に対する教師の主体的な取り組みと意味づけを明らかにしたことは、現在進行中の地理歴史科・公民科に新科目を設ける議論に対してどのように向き合うかを考えていく上でも示唆を得ることができる。 当初の計画以上に研究を深めることができ、1年度目と2年度目の研究成果を総括しながら、教師の教科観の形成要因として教育課程の変容以外にも勤務校での生徒との出会いが重要であることを明らかにした。また、地理歴史科・公民科教師のライフヒストリー研究で明らかにした知見を、教員養成に応用することは、学生の教科観・教師観を育む上で有効であることを明らかにした。さらに、これからの研究の発展の方向性として、教師のライフヒストリーを希望学の知見と結びつけ、聴き取らなければ語られることのない、教師が教科に見出してきた何ごとかを実現しようとする願い(=希望)に着目していくことの重要性を提起した。
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