当該年度において,私は大学生を対象とした実験室実験(研究1)と一般の日本人成人を対象としたWEB調査(研究2)を実施した。 研究1では,「感情状態」がギャンブル行動に及ぼす影響を検討するため,関東圏の国立大学に通う大学生を対象とした実験室実験を実施した。実験参加者には,映像視聴による感情状態の操作を行った上で,ギャンブル課題に取り組ませた。なお,実験に用いた映像は,大学生・大学院生を対象とした予備調査を実施し,選定した。実験計画は,一要因三水準の参加者間計画(快感情群,中性感情群,不快感情群)であった。分析の結果,“快感情群”の参加者は,“中性感情群”と“不快感情群”の参加者よりも,賭けの“リスク”と“時間”の側面に関して,勝敗の影響に敏感になることが示された。 研究2では,日本人成人を対象としたWEB調査を実施し,ギャンブル接触の実態を把握するとともに,病的賭博傾向とBig Fiveパーソナリティ特性との関連について検討した。具体的には,株式会社クロス・マーケティングの保有するモニターに回答を依頼した。結果から,回答者の約47.6%が,“これまでにギャンブルを行った経験がある”と回答しており,回答者の約11.3%が,病的賭博者に移行する可能性があったことが示された。さらに,病的賭博傾向と“情緒不安定性”との間に正の相関が,“誠実性”,“調和性”との間に負の相関が見られた。 そして,当該年度において,私は博士論文(題目:ギャンブルの基礎的行動メカニズムとその影響要因に関する実験的研究)の提出を行い,博士(心理学)の学位を取得した。本博士論文は,当該年度に実施した研究を含め,計10個の実験研究で構成され,ギャンブルの基礎的行動メカニズムとその影響要因について,検討を行った。
|