研究課題
本年度の目標は、(1)一次運動野に活動依存的可塑性を引き起こす人工皮質間接続の開発、(2)人工皮質間接続の適用にともなう運動野の活動変化の解明、であった。人工皮質間接続は、運動野から計測された皮質脳波信号の特徴量に基づいて、任意の皮質脳波電極を介して一次運動野に硬膜外電気刺激をおこなう。この構成要素となる、刺激と記録が可能な多点皮質脳波電極、および記録と刺激が同時にできる実験装置は、年度初頭に使用可能な状態へと整えることができた。しかし、一般的な脳波の振幅や位相の計算アルゴリズム(例:高速フーリエ変換)を用いて神経活動の特徴量を計算すると、大きな時間遅れが生じることがわかり、このままではある脳領域の活動をトリガーにした瞬時脳刺激、という人工皮質間接続の開発要件を満たすことができないことが明らかになった。そこで、音声認識分野で用いられていた計算アルゴリズムを、海外渡航先の研究機関と共同で神経活動推定用に改良し、この時間遅れの問題を解決した。結果、ソフトとハードの両側面で、人工皮質間接続の開発に必要な構成要素を整えることができた。人工皮質間接続の適用にともなう運動野の活動変化の解明は、前述のアルゴリズム開発に時間を要したため、人工皮質間接続を実験動物へと適用するには至らず、達成することができなかった。ただし予備実験として、硬膜外電気刺激を任意の2点に対して常に一定の時間差で与え、その前後での運動野の活動変化を評価した。この2連発刺激は、刺激によって強制的に神経細胞を活動させる点は異なるが、人工皮質間接続と同様に異なる2つの脳領域を同期的に活動させることができる。現在は、この介入前後に計測した脳活動データを解析している。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Neuroscience
巻: 297 ページ: 58-67
10.1016/j.neuroscience.2015.03.045