研究課題/領域番号 |
14J00632
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
原田 真喜子 首都大学東京, システムデザイン研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 集合知 / ソーシャルメディア / 視覚化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、集合知をもとに社会的な課題を抽出し、ユーザに解決策の提案を促す視覚化手法を検証することである。検証はコンテンツの制作を通して行う。コンテンツでは、社会問題に関する集合知を生成するシステムの開発を行い、そこで得られる集合知をアーカイブして視覚化することを試みた。この制作物のアクセス分析とユーザアンケートや社会的反響によって、手法の効果を検証する。具体的に、下記2点を備える手法の構築を行なった。 A. ソーシャルメディア上の意識的・無意識的な一般ユーザの書き込みから集合知を形成するシステム [期待される効果]諸事象における一般ユーザの声が反映された問題抽出と解決策の提案普及の促進。これらのプロセスを通した知恵の生成。 B. 既存データと集合知の統合による、集合知的性質を持つアーカイブとコミュニティの生成および視覚化 [期待される効果]直観的・俯瞰的な情報の知覚化を促す。アーカイブを通した日常的な情報共有と課題解決を促進するコミュニティの拡大。 本研究で扱うテーマとして、ⅰ)妊産婦の移動時における便利・不便性の視覚化 ⅱ) NPO活動記録発信におけるウェブ集合知の導入と発信の2点を掲げた。これらのテーマごとに、アーカイブ機能と集合知機能を備える視覚化コンテンツを制作・公開した。ⅰ) においては、「駅」ごとに集合知を生成し、地図上に重ねて掲載した。エレベータ、段差等の位置を調べ、基盤データとして内包させた。ⅱ) については、バングラデシュに寺子屋を作る活動を行っているNPO法人の資料をもとに視覚化を行った。本研究の成果により、集合知上に現われる知恵を日常生活に還元させ、社会的課題抽出と諸問題の解決に寄与することができると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デザイン手法の設計にあたり、集合知活用とメディアの関係性に関する文献調査、既存ソーシャルメディアにおける情報伝搬効果とその特性の調査や、一般ユーザに馴染みのない情報をわかりやすく伝えるために求められるインタラクションのデザイン設計といった予備研究を【研究実績の概要】に記載した具体的な項目ⅰ)、ⅱ) に関わる制作と同時に進行した。 以下に、【研究実績の概要】に記載した具体的な項目ⅰ)、ⅱ)ごと達成度をまとめる。 ⅰ)においては、ベビーカーユーザと、そうでないユーザの駅におけるベビーカーに関する声を比較閲覧するための、アーカイブコンテンツ(本作品)を制作した。本作品では、予備研究によるTwitterによる集合知には、実世界センサーとしての役割があるという知見より、これをユーザの体験談として扱った。視覚化においては、ユーザに親しみを与えるアイコンの採用や、ランダムな情報提示とアニメーション、ユーザのインタラクションによって表示されるコンテンツ設計を施し、開発・公開した。ユーザアンケートによる検証の結果、本作品によって、ベビーカーユーザの駅に置ける不便性への理解が促進したことがわかった。一方、コミュニティの設計については未だ研究の余地があると考えられるため、予備研究で得られた知見を元に改良を加える予定である。 ⅱ) においては、資料の委託と資料の掲載に関わる著作権の確認を終えることができた。また、デジタル地図作成に関わる、データ共有・編集が可能なオンラインで作業プラットフォームを作成し、両者の作業/確認を同時進行で実施することを可能にした。また、集合知形成プラットフォームについても先方と方針を決定することができている。以上よりⅱ) ではABの手法に関わるデザイン設計までが終了した。 以上の達成度は、研究計画書に記載したスケジュール通りに進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
以下に、【研究実績の概要】に記載した具体的な項目ⅰ)、ⅱ)ごとの今後の研究の推進方策をまとめる。 ⅰ)においては、研究成果を公開した結果、コミュニティの設計については未だ研究の余地があるという知見が得られた。さらに、得られたデータを「読ませる」工夫が欲しいというコメントも得られたため、コンテンツの改良を行う予定である。さらに、改良後に改めてユーザアンケートを実施し、現在はデザイン手法に関わる論文のみであるが、コンテンツの効果を含めた論文を執筆・投稿する予定である。 ⅱ) においては、【現在までの達成度】に記載したようにデザイン設計とデータの集積が完了したため、これらをコンテンツに反映させる予定である。具体的には、コンテンツの開発、データ反映/更新の自動化プログラムの作成、集合知反映プログラムの作成を行う。さらに、コンテンツのインタフェースには予備研究で得られた、一般ユーザに馴染みのないデータの提示におけるインタラクション設計を反映させる予定である。コンテンツの公開は今秋に開催されるNPO法人のイベントに合わせて行う。公開後のユーザの反響を元に、デザイン設計とその効果についての論文を執筆する予定である。
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