研究課題/領域番号 |
14J00647
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
住吉 浩明 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ワイル半金属 / カイラル磁気効果 / 重力 |
研究実績の概要 |
ワイル半金属において、格子欠損によって引き起こされる電磁応答について研究を行った。 近年、chiral magnetic effect(カイラル磁気効果、CME)と呼ばれる現象が、物性物理学だけでなく核物理学、非平衡物理学といった物理の多分野で注目を浴びている。この効果はDirac/Weyl粒子系において量子異常によって引き起こされる特異な電磁応答である。具体的には、この効果によって、磁場をかけたら平行して電流が引き起こされる現象である。物性ではDirac/Wey半金属、核物理では重イオン衝突実験においてこの効果は議論されている。 本研究では、格子欠陥によって引き起こされる有効的な磁場による、CMEに類似した効果である、torsional chiral magnetic effect(TCME)を提案した。さらに、曲がった時空の場の理論およびtight-binding模型における数値計算によってこの効果を確かめた。 本研究によって提案されたTCMEは、異なるカイラリティをもつワイル点のエネルギーが異なる場合(空間反転対称性の破れたワイル半金属)に起こる通常のCMEと違い、ブリルアンゾーンのことなる点にワイル点が存在する場合(時間反転対称性の破れたワイル半金属)に起こることがわかった。 また、CMEは現実の格子系では静的には起こらないことが先行研究[M.M.Vazifeh and M.Franz PRL(2013), N.Yamamoto PRD (2015)]によって理論的に示されているが、格子系の数値計算等によってTCMEは格子系でも起こることがわかった。先行研究のno-go theoremとTCMEの関連についても論文で議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の目的は超伝導体における、Berry位相に起因した輸送現象の解明である。前年度、カイラル超伝導において特異な熱電効果が発現することが本課題によって発見され、今年度は、この結果のより広いクラスの超伝導体への一般化を試みた。しかし、計算の困難により一次中断し、近年注目を浴びているワイル半金属におけるBerry位相に起因した輸送現象にテーマを切り替えた。今年度の研究において、chiral magnetic effectに類似した効果である、torsional chiral magnetic effectを提案し、これが実際の格子系で実現可能であることを示すことが出来たのは、当該分野で大きな意味を持つと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で得られた知見をもとに、chiral magnetic effectの実現可能性に関する研究や、torsional chiral magnetic effect以外の類似的な効果の提案を行っていきたい。また、これと同時に、輸送現象とBerry位相の結びつきについて、相互作用のある系への一般化を行っていきたい。より具体的には、分数量子Hall状態において操作的に定義されるBerry位相とChern-Simons作用の関係性[Q.Niu et. al., PRB, (1985)]のような、トポロジカル秩序相におけるBerry位相とトポロジカル作用との関係性を、重力理論などに基づき導いていきたい。
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