研究実績の概要 |
本年度は以下の2つの研究を行った。 [研究1]格子欠陥によって引き起こされる有効的な磁場による、chiral magnetic effect(カイラル磁気効果、CME)に類似した効果である、torsional chiral magnetic effect(TCME)を提案した。研究は、曲がった時空の場の理論およびtight-binding模型における数値計算を用いて遂行された。 本研究によって提案されたTCMEは、異なるカイラリティをもつワイル点のエネルギーが異なる場合(空間反転対称性の破れたワイル半金属)に起こる通常のCMEと違い、ブリルアンゾーンのことなる点にワイル点が存在する場合(時間反転対称性の破れたワイル半金属)に起こることがわかった。 また、CMEは現実の格子系では静的には起こらないことが先行研究[M.M.Vazifeh and M.Franz PRL(2013), N.Yamamoto PRD (2015)]によって理論的に示されているが、格子系の数値計算等によってTCMEは格子系でも起こることがわかった。先行研究のno-go theoremとTCMEの関連についても論文で議論した。 [研究2]非一様磁場によって引き起こされるCMEを議論した。一様な静的磁場では上述のno-go theoremにより、CMEは起こらないことが示されている。一方で、非一様磁場においてはこの定理の仮定が満たされず、電流が引き起こされると考え、研究を行った。本研究によって、正弦関数型等の様々な空間依存性をもつ磁場によって電流が引き起こされうることを、理論的に示された。また、この効果は、磁化測定によって実験によって検証が可能であることを示した。
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