研究課題/領域番号 |
14J00655
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
内野 宏俊 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 特徴的イオン速度分布の生成 / 磁気圏高エネルギーイオンの生成 |
研究実績の概要 |
磁気圏尾部を模擬した磁場構造を初期条件とする粒子シミュレーションによって、「ダイポラリゼーションフロント」と呼ばれる速度・磁場構造変化と、ダイポール領域の相互作用が、磁気圏サブストーム時に観測されていた特徴的なイオン速度分布を生み出していることを示唆した。新しい初期条件としてプラズマ圧が高いダイポール領域をプラズマシートに接続させることによって生じた運動論的効果がイオンの軌道を変化させ、人工衛星観測に近い速度分布を得ることができた。
磁気圏昼側・夜側の無衝突磁気リコネクションは、磁気圏サブストームのエネルギー流入・解放の主機構であり、非常に重要な物理過程である。2015年3月にNASAが打ち上げたMMS衛星は、この磁気圏昼側・夜側の磁気リコネクションを観測するものであり、今後得られるMMS衛星の観測データとの比較の準備のために、現在、超並列化された粒子シミュレーションコードを用いて、昼側・夜側の磁気リコネクションの再現を行い、得られた結果の解析を進めている。それをもとに、衛星データの解析で有用な磁気リコネクションにおけるエネルギー変換量を特徴付ける物理量の提案を行っている。
また、2009年2月27日のサブストームイベント時に観測された、磁気圏尾部で1MeV近くまで加速されたプロトンについて、従来とは異なる新たな高エネルギー粒子の生成機構を提案した。1MeVに近い高エネルギーの粒子の観測は、磁気圏尾部では非常に珍しいものであるが、今回のイベントの観測から考えられる磁気圏尾部で2つ同時に磁気リコネクションが発生したと仮定すると、そのような高エネルギー粒子が生成されることを理論・シミュレーションの両面から示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
運動論的プラズマシミュレーションを用いて、サブストームにおけるイオンの特徴的速度分布を説明することに成功、あるいは磁気圏尾部での高エネルギーイオン生成のための新たな理論を展開することができたが、当初の目的である電磁ハイブリッドコードの開発という点では遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
申請者が所持している高速化されていないハイブリッドコードの改良を行い、磁気圏をグローバルに再現するシミュレーションコードを作成する。サブストームの発生機構の解明のために不可欠な人工衛星観測データの解析を、磁気圏尾部を主に観測するTHEMIS衛星と、昼側の磁気リコネクションを観測するMMS衛星のデータを用いて行う。
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