研究課題
半導体ナノ粒子(QD)は、高い発光量子収率と可変な酸化還元特性をもち、その特性が表面物性によりチューニング可能なために多分野への応用が期待される材料である。本課題研究では、QDからタンパク質内の酸化還元中心への光電子移動が高効率に進行するQD-タンパク質の複合体の構築、さらに、この複合体を用いて光照射によるタンパク質の機能発現に取り組んだ。昨年度は、CdTe QD表面に固定化したシクロデキストリンとミオグロビン(Mb)に導入したアダマンチル基の超分子相互作用を利用し、QDとMbの複合化方法の確立を行った。本年度は、さらに電子移動反応効率の向上をめざし、電子メディエーター部位としてのフェロセニル基を導入した人工ヘム分子をアポMbに挿入し、フェロセニル基を有するMb(Mb-Fc)を調製した。Mb-FcとQDとの超分子複合体形成について検討し、効率的な電子移動が進行する反応系の構築条件を探索した。あわせて、CdTe QDと組み合わせて用いる人工生体触媒の調製に取り組んだ。バレル構造を有するニトロバインディン(NB)をタンパク質骨格として選択し、酸化還元可能な種々の金属テルピリジン錯体、および金属フェナントロリン錯体の導入を検討した。マレイミド基を導入したテルピリジン配位子およびフェナントロリン配位子を、システイン残基を導入したNBと結合し、続く金属イオンの添加により金属錯体の形成を行った。NBに導入したテルピリジン配位子はCu(II)イオン、Co(II)イオンおよびZn(II)イオンを、フェナントロリン配位子はCu(II)イオンを結合可能であることが確認された。得られた複合体は、アザカルコンとシクロペンタジエンのDiels-Alder反応を触媒することが判明し、タンパク質に結合した銅テルピリジン錯体では、結合していない錯体と比較して触媒回転数とエンド選択性の向上が確認された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Inorganic Biochemistry
巻: 未定 ページ: 未定
10.1016/j.jinorgbio.2015.12.026
ACS Catalysis
巻: 5 ページ: 7519-7522
10.1021/acscatal.5b01792