研究課題/領域番号 |
14J00680
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
太田 岳人 筑波大学, 芸術系, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 美術史 / ブルーノ・ムナーリ / 未来派 / 国際芸術運動 |
研究実績の概要 |
本研究は、第二次世界大戦後において世界的な評価を得た芸術家・デザイナーである、ブルーノ・ムナーリの自己形成の時期にあたる1945年までの時期の彼の活動について、大戦間期のイタリアの芸術界の状況、また国際的なアヴァンギャルド的芸術諸潮流との関係を踏まえて考察することを目的としている。 研究計画の一年目に当たる本年度において、研究者はムナーリについての基本的な文献と史料の収集・整理、また海外のムナーリ研究者による情報共有サイト「MunArt」に公開されている、同時代史料や研究論文の通読を開始した。さらに、7月末から8月中旬にかけてアメリカに滞在し、イェール大学付属バイネッケ貴重書・手稿図書館の「マリネッティ文書」の調査を行った。この文書は、マリネッティの詩にムナーリがグラフィック・デザインを付したものとして名高い『ミルクの衣服の詩』(1937年)の草稿だけでなく、未来派のリーダーと1920-30年代にこの運動へ参加した多くの芸術家との間に交わされた多数の書簡を所蔵しており、それらの閲覧および複写収集を通じて、ムナーリを含む未来派に参加していた当時の若手芸術家を取り巻く環境についての知見を深めた。また滞在時には、ニューヨークのグッゲンハイム美術館で開催されていた特別展「イタリア未来派:1909―1944年」で、ムナーリが航空専門誌のために構成した《『アーラ・ディターリア』のフォトモンタージュ》や、最初期にデザインした作品の一つである《前菜受け皿》のような、日本では知られていない作例を熟覧する機会も得た。年度末には、本調査とイタリアでの調査の成果を含んだ論文を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ムナーリに関わる一次史料の収集については、それらがイタリアおよびアメリカの各所に分散している状況もあり、今後も積極的に継続していく必要があるものの、基礎的なモノグラフやインターネット上にオープンソース化されている情報については、一通りの蓄積をすることができた。研究成果の発表については、次年度以降に複数の関連学会への全国大会へのエントリー、また論文の投稿を計画中である。以上の点から、研究はおおむね順調に進展していると言うことが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
ムナーリの出発点となった未来派に加え、抽象主義画家グループや合理主義建築家グループといった、国外のモダニズム芸術潮流から刺激を受けたイタリア国内の諸グループがムナーリに与えた影響について考察するため、彼らが拠点とした同時代の芸術専門誌についての精査を引き続きイタリアで行う。本年度の奨励費による研究と並行して行われた、学術研究助成基金助成金による調査において、研究者は『イル・ミリオーネ』など一部の雑誌を通読することができたが、今後も前衛芸術に親和的な雑誌の動向をさらに広く調べることで、問題への理解を深める。また、同時期のムナーリが残したデッサンや作品などを検討するため、それらの一部を保存している未来派研究所(ミラノ)のような諸機関を活用できるよう、調整を進める。
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