研究実績の概要 |
これまでに私は、複数報告されているArf6 GTPase 活性化因子のうち、唯一ARAP3が高浸潤性乳癌細胞株に高発現していることを明らかにした。またARAP3は癌細胞浸潤を制御し、浸潤仮足形成に重要な役割を果たすことを明らかにした。 採用二年度には、ARAP3が癌細胞in vivoにおいても癌細胞浸潤を制御するか、さらにはARAP3の浸潤仮足形成分子メカニズムの詳細を明らかにすべく研究を遂行した。その結果、ARAP3はin vivoにおける癌細胞の浸潤・転移を正に制御すること、ARAP3は上皮増殖因子受容体 (EGFR) の細胞膜へのリサイクリングを制御し浸潤仮足形成を促進すること、ARAP3はEGFRを含むエンドソーム膜のイノシトールリン脂質であるPI(4,5)P2の量を調節することの三点を明らかにした。当初来年度(採用三年度)に予定していたin vivo におけるARAP3の機能解析まで、本年度中に終了することができた。さらには、ARAP3によるArf6の不活性化がEGFRのリサイクリングを制御し、浸潤仮足形成を促進するという新規分子メカニズムを示すことができ、本研究は大きく発展した。今後はEGFRを含むエンドソームにおけるPI(4,5)P2の量がどのように調節されてEGFRの細胞膜へのリサイクリングを制御するのか、その分子メカニズムをさらに突き詰めていく。また、国際的に知名度の高い細胞生物学の雑誌に投稿し、掲載されるよう、十分な補助データを取る予定である。
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