本年度は、昨年度に引き続き群杭基礎の杭周地盤抵抗を研究した。砂質地盤と粘性地盤に打設された実大の群杭基礎を対象に、三次元有限要素法(3D-FEM)を用いて杭一本ごとの杭周地盤抵抗の履歴性状を把握した。その結果、砂質地盤では変位が大きくなっても安定した履歴曲線を描くのに対し、粘性地盤ではスリップ型の履歴曲線を描いており、杭-地盤間の剥離の影響が大きいことを明らかにした。また、3D-FEMより求めた群杭の極限地盤反力は、概して基礎構造設計指針よりも小さくなることを示した。これらの成果をもとに日本建築学会の支部研究発表会(大阪)と年次大会(福岡)、および第16回世界地震工学会議(チリ・サンティアゴ)で発表した。 さらに、本年度は4月に「平成28年熊本地震」(以下、「熊本地震」と称する。)が発生したことを受け、本地震による被害の現地調査および検証を行った。調査で擁壁地盤の被害が多く見られたことを受け、擁壁地盤上に建つ仮想の杭基礎建物を対象に、KiK-net益城の観測記録を入力動として3D-FEMによる地震応答解析を行った。その結果、擁壁の存在により地盤応答が杭位置で異なるために、擁壁に近い位置の杭頭で曲げモーメントが増大しており、擁壁をもつ段差地盤上の杭基礎の設計では擁壁地盤の影響を適切に考慮する必要があることを示した。この成果は、日本地震工学会の年次大会(高知)で発表した。 また、熊本地震時に益城町庁舎の1階で得られた観測記録を、杭-上部構造系の多質点系モデルとKiK-net益城の観測記録を用いてシミュレーションした。その結果、表層の凝灰質粘土層で杭-地盤に上で述べたような剥離を考慮することにより、解析結果は観測記録を良好にシミュレーションすることができた。この成果は、来年度の日本建築学会の支部発表会(大阪)と年次大会(広島)で発表する予定である。
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