研究課題/領域番号 |
14J00739
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三木 春香 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | CD300a / Alumアジュバント / フォスファチジルセリン / 喘息 |
研究実績の概要 |
申請者は、骨髄球系の免疫細胞に広く発現し、アポトーシス細胞上のフォスファチジルセリン(PS)をリガンドとして認識する抑制性受容体であるCD300a(MAIR-I)のアレルギー生気道炎症における機能解析を行った。これまでの研究結果により、MAIR-IがOVAとアルミニウム塩(Alum)アジュバントにより誘導されるマウス喘息モデルで、血清中IgE価の上昇、気道の好酸球浸潤、気道抵抗の増悪に関与することが示された。 本年度の研究により、MAIR-Iが喘息の感作期にTh2分化の促進に関与することで、マウスの喘息症状が悪化することが示された。腹腔中にOVA/Alumを投与すると、MAIR-Iを高発現する単球由来の樹状細胞である炎症性樹状細胞が増加した。野生型あるいはMAIR-I遺伝子欠損型マウス由来の炎症性樹状細胞とナイーブCD4陽性T細胞を共培養すると、MAIR-I遺伝子欠損型由来の炎症性樹状細胞と共培養したナイーブCD4陽性T細胞では、Th2細胞への分化が抑制された。さらに、OVA/Alum投与後の腹腔洗浄液の共焦点顕微鏡での観察により、PSがMAIR-Iを介して樹状細胞に結合することが明らかになった。また、抗MAIR-I阻害抗体を用いて腹腔中でのMAIR-IとPSの結合を阻害することにより、喘息誘導期の所属リンパ節でのTh2応答が抑制され、IgE抗体の産生の抑制、気道の好酸球の浸潤が抑制されることが示された。これらの結果から、Alumアジュバントにより誘導されるアポトーシス細胞が、炎症性樹状細胞上のMAIR-Iを介してTh2応答、アレルギー性喘息の病態を制御していることが示された。ワクチンアジュバントとして広く用いられるAlumが、IgE抗体産生やアレルギー応答を引き起こす機序にMAIR-Iが関与している可能性を示す新規の知見であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究計画を一部変更し、アポトーシス細胞が生体内においてMAIR-Iを介してアレルギー性炎症を制御することを明らかにすることを重点的に行った。上記の研究結果により、Alumアジュバントにより誘導されるアポトーシス細胞が、MAIR-Iを介してTh2応答の制御、アレルギー性喘息の病態を制御していることが示された。これらの結果は、ワクチンアジュバントとして広く用いられるAlumが、IgE抗体産生やアレルギー応答を引き起こす機序にMAIR-Iが関与している可能性を示す新規の知見であり、国際雑誌に研究結果が掲載される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、炎症性樹状細胞上のMAIR-IがTh2応答を制御するメカニズムを明らかにする。当初の研究実施計画に沿って解析をすすめる。
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