研究実績の概要 |
今年度は含硫黄縮合複素環の効率的合成法の開発を試みた。我々がこれまでに見出しているアリールホスフィン酸類と内部アルキンとの酸化的環化 (Org. Lett. 2013, 15, 3258.)の知見をもとに、まず含硫黄6員環化合物のスルトンの合成を試みた。検討の結果、カチオン性Cp*Rh触媒および銀塩酸化剤存在下、アリールスルホン酸と内部アルキンを反応させると、低収率ながら環化反応が進行し縮合スルトンが生成することを見出した。 次に、このCp*Rh(III)触媒を用いる酸化的カップリング反応において、さまざまな含硫黄官能基が配向基として機能しないか種々検討を行った。その結果、アリールホスフィンスルフィドとアルケンとのカップリングによるオルト位直接アルケニル化反応が、同ロジウム触媒を用いて行えることが分かった (J. Org. Chem. 2014, 79, 7649.)。本系では銅塩を酸化剤として用いることで円滑に反応が進行し、目的のアルケニル化体を得ることが可能である。 さらに、カチオン性Cp*Rh触媒および銅塩酸化剤存在下、アリールジチアンとアルケンとのオルト位直接アルケニル化反応が進行することを見出した (Org. Lett. 2015, 17, 704.)。本反応では1,3-ジチアンが配向基として機能し、位置選択的かつモノ置換体選択的にアルケニル化反応が進行し、様々な官能基を有する基質も用いることができる。一部の電子豊富な基質は、量論量の銅塩と共存させると分解し反応がうまく進行しないことがあったが、酸化剤を酢酸銅/活性二酸化マンガンの組み合わせに変えることで円滑に反応が進行した。得られた生成物のジチアン保護基は容易に脱保護可能で、条件によりアルデヒドへ変換したり脱硫還元を行ったりすることが可能であることを明らかにした。
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