前年度に引き続き、β-NaFeO2型酸化物の電子構造を第一原理計算によって解析し、結晶構造が電子構造に与える影響を検討した。Cu+やAg+などのd10電子配置のイオンを含むβ-NaFeO2型酸化物の電子構造においては、Cu+やAg+の周囲の局所構造や、最近接原子間距離(Cu-Cu、Ag-Ag距離)が、価電子帯の分散を決定する因子であることを明らかにした。これらの成果は、論文二報として発表予定である。 また、β-CuGaO2薄膜の前駆体となるβ-NaGaO2薄膜を、スパッタリング法や電子ビーム蒸着法によって作製し、各種成膜パラメータが得られる薄膜の組成や結晶性、配向性にどのような影響を与えるかを検討した。成膜するサファイア基板の配向面によって、種々の配向性をもつβ-NaGaO2薄膜が得られることが明らかとなった。また、スパッタリングや電子ビームによる成膜では、時間経過によってターゲットの組成が変化してしまうため、化学量論組成のβ-NaGaO2薄膜を得るためには、ターゲットの組成が変化しづらい成膜方法を検討する必要がある。
|