航空産業における、航空会社間の競争を促進すべきか否かについて研究を行った。まず研究の背景として、ある航空路線に1社のみが就航している場合と、複数社が就航している場合を比較して、1社のみによる運航の方が航空ダイヤが均一になっていることに着目した。便数を所与としたとき、等間隔で航空機が発着するスケジュールの方が利用者にとって利便性が高いため、仮に1社独占によって航空運賃が高額になったとしても、独占の方が社会的に望ましくなりうる可能性がある。以下では、独占と競争のいずれが社会的に望ましいかについて述べる。 まず、ある航空路線における便数が多い場合は、運航間隔に偏りが生じたとしても利便性の低下による損失はあまり大きくない(仮に1時間に2便あるとき、その運航間隔が15分と45分になったとして、利便性はあまり低下しない。)。したがって、競争を促進して運賃を引き下げた方が社会的に望ましい。これに対して、着目する路線において便数が少ない場合は、運航間隔に偏りが生じることによる利便性の低下が利用者にとって深刻な問題となる(仮に1日に2便しかないとき、両方が午前出発であったとすれば、著しく不便なダイヤであるといえる)。したがって、競争を規制して1社による独占的な運航を認めることが望ましい。 また、数値シミュレーションを行って、独占と競争のいずれが望ましいかの境界となる便数を具体的に計算した。その結果、1日当たりの便数が概ね5便以下の路線は1社による運航が望ましく、6便以上の場合は複数社による運航が望ましいことが明らかになった。
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