研究課題/領域番号 |
14J00777
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平野 哲郎 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 周波数調整による励振制御 / 外殻換装可能な質量駆動ユニット / Bessel関数 / 旋回運動 |
研究実績の概要 |
本年度は,以下の3点に的を絞って研究を行った. ①周波数調整による励振制御について……物体の動的な転がりにおいては,揺れながら特定の方向へ進んでいく場合があり,これをロボットの移動モードとして利用することがある.このとき,転動ロボットにおいては内部の質量駆動によって物体の重心位置が変わるため,非線形的な振動に遷移しやすい.申請者が提案した周波数調整による励振制御 (Frequency Adjustment Excitation control)は,モデルの情報をそれほど使うことなく非線形的な振動に対しても励振や制振を施すことができる.今回は,提案した制御手法の有効性を確かめるために,先行研究との比較が容易で,転がりにおける揺れの振動に近い振動特性を現す2重振り子系などに対して数値シミュレーションを行った. ②外殻換装可能な質量駆動ユニットの開発について……本研究では,転動ロボットの統合的な制御手法を考えることを目的としているため,この目的に沿った研究プラットフォームが必要であった.そこで今回は,1次元の入力自由度を持つ質量駆動ユニットを製作し,これに換装可能な外殻を接続する形でロボットを構成することで,汎用的な研究プラットフォームとすることにした.現在は,これを用いて多くの転動ロボットに共通する運動である“旋回”に関する実験を行っている.この実験から得られる結果から,旋回をベースとした運動生成に関する制御理論を構築する. ③特殊関数を用いた転がり運動の表現について……旋回運動に着目すると,これは速度のレベルで記述した方程式を用いて考えることで,より簡単に制御理論を構築できる可能性がある.申請者は,このような系に周期的な入力を与えた場合の時間応答が,Bessel関数などの特殊関数として現れることを明らかにし,これを用いて円筒のような旋回を行う転動ロボットに対する制御手法を提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では,円筒型の転動ロボットにおける縁での転がり運動の制御についての研究を進めることを目標としていた.これに対して,縁での転がり運動の基本的なものの1つである,旋回運動を簡単に記述するための方程式を立式することができただけでなく,これを用いた位置制御の手法も提案することができた.そもそも,この制御手法は,円筒型の転動ロボットのために提案したものであったが,旋回という運動が円筒型の転動ロボット特有のものではなく,実際にはより一般的な「旋回を行うロボット」全体に適用可能なものであることがわかった.したがって,様々な形状の転動ロボットでも,旋回をベースに運動制御を施すことができるため,本研究は転動ロボットの統合的な制御理論構築のための大きな足掛かりとなったといえる. その他にも,制御理論を実際に検証するための汎用的なプラットフォームも順調に製作することができたため,理論と現実の両側面から研究の有用性を検証するための基礎を築くことができたことも大きな前進であるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
旋回運動を基本とした運動を考えるに当たって,その解析の中でBessel関数といった特殊関数が現れることがわかった.こういった特殊関数は,非線形制御理論の根幹を支えているLie群論とも密接に関係している.そこで,今回の解析をきっかけとして,旋回運動を包含するようなより広いクラスの制御理論を,特殊関数論とLie群論から構築していくことを考える.その結果,より一般的な転動ロボットの非線形制御理論を構築できることが期待でき,さらには,転動ロボット以外の類似する拘束条件を持つシステムにも適用可能なものを提案することができると考えている. また,初年度で製作したプラットフォームを用いた実験においては,自らが考案した理論を検証するだけでなく,様々な直感的な入力を与えたときのロボットの挙動を観察することにも重点を置く.これによって,旋回に限らない転動ロボットの新たな制御手法を提案することにもつながると申請者は考えている.
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