研究課題
葉緑体核様体の形態制御に関わる分子メカニズムに迫るべく、緑藻クラミドモナスの変異体monokaryotic chloroplast (moc) H72に注目した。mocH72は葉緑体DNAの不均等分配が頻繁に観察される(Misumi et al., Protoplasma, 1999)。申請者はmocH72の原因遺伝子MOC1を同定し、さらに陸上植物シロイヌナズナにおいても、MOC1は葉緑体に局在し、葉緑体DNAの維持や葉緑体核様体の形態制御に極めて重要であることを示した。MOC1はSWISSホモロジーモデリングによってバクテリアのRuvCタンパク質様構造を形成することが示唆された。RuvCは相同組換えの最終ステップであるホリデイジャンクション(HJ)の切断酵素であり、葉緑体において相同の活性を示す酵素はこれまで見つかっていない。申請者は、MOC1はHJに特異的に結合し、補因子としてマグネシウムイオンやマンガンイオンを要求しながら、25-35℃付近で強いエンドヌクレアーゼ活性を示すことを明らかにした。さらに、様々な構造や配列を持つ基質を作成し、シス配列や構造特異性を解析したところ、MOC1は切断活性にはシス配列として長い相同配列は必要とせず、コア配列C↓C(↓は切断サイト)を点対称に切断することを証明した。葉緑体には約80コピーの相同DNA分子が存在しており、それらは光合成によって発生する活性酸素種などによって常に障害をうける。つまり、葉緑体では頻繁な相同組換えによって、葉緑体DNA分子同士はHJによって繋がった構造(葉緑体DNAコンカテマー)を形成すると考えられている。MOC1は葉緑体内においてHJを切断し、コンカテマーを解消することで葉緑体DNAの可動性、延いては葉緑体核様体の可動性を保証していると考えられる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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