研究課題/領域番号 |
14J00793
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堺谷 洋 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 多自由度アクチュエータ / 球面アクチュエータ / 電磁アクチュエータ / 三次元有限要素法 / 実機検証 |
研究実績の概要 |
本年度は,多自由度球面電磁球面アクチュエータにおいて任意の方向へ任意のトルクを発生させる電流値制御手法の提案を行った. 球面アクチュエータは,目標に対して(三軸方向のトルク),入力(コイルの相数)が多く,目標を満たすための入力が無数に存在する.目標とする出力を生成するための入力を決定する手法として,擬似逆行列を用いる方法や,目標トルクと各コイルが有する電流トルクのベクトル距離を最小化する方法などが提案されている.しかしながら,これらの方法はいずれも事前にモデルによって依存するトルクモデルを獲得する必要があり,生成される電流値はこのトルクモデルに大きく依存する.我々はトルクモデルを用いずに電流値を決定し,小さい電流で駆動する手法を提案し,シミュレーションと実機検証によりその有効性の確認を行った. 提案する制御手法は三ステップよりなる.初めに,コイル位相の決定を行う.従来の交流モータのベクトル制御と同様に,可動子の磁石に対して1/4周期進んだ位相を固定子コイルにおいて生成する.これにより各磁極はそれぞれ,各磁極で発生し得る最大の推力を可動子に生成する.次に固定子磁極の重み付けを行う.1/4周期進んだ位相を固定子側で生成すると,固定子磁極はそれぞれ最大の推力を発生する.しかしながらこれらの推力の方向は目標トルクに対して一致したものではないため,目標トルクの方向と一致するものだけを選別する.最後に電流振幅を決定する.前述の操作によって設定された電流値ベクトルの大きさを設定する.目標とするトルクの大きさが大きい場合には,電流振幅を大きく,小さい場合には電流値振幅を小さく設定する. 以上述べた提案制御手法の有効性を,従来制御手法との比較により確認した.小さい電流かつ高精度で提案制御手法が駆動できることを,シミュレーションと実機により確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は制御手法の構築と,カラーセンサを用いた角度検出方法の構築を主眼として研究を行う予定であった.多自由度アクチュエータの制御手法については,従来の計画通り高効率に駆動できる制御手法を提案し,三次元有限要素法によるシミュレーションと,実機検証によりその有効性を確認することができた.また得られた成果については,国際学会において世間に示すことができた. カラーセンサを用いた三自由度可動子の位置センシングについては,位置探索アルゴリズムの検証を行った.カラーセンサによって検出した情報と,あらかじめ獲得しておいたマッピング情報を照らし合わせることにより,色情報を角度情報へと変換する.その検出値と合致するマッピングデータの探索の仕方は,全探索が最も簡易的な方法であるが,高い計算負荷を要する低効率な方法である.そこで色勾配ベクトルを取り入れた新たな探索手法の提案を行った.検出した色情報と,現在参照しているマッピングデータの色情報を比較し,マッピングデータの色勾配情報から,検出した色情報を出力する位置へと高速へと到達する手法である.提案した位置探索手法については数値シミュレーションと実機検証によりその有効性を確認した. 以上により,研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後はカラーセンサを用いた三自由度可動子の位置センシング手法について,エンコーダ方式の検討を行う.現在までの可動子に対する色の塗布の仕方はグラデーション方式であった.これは可動子の位置に対して,色がアナログに変化する.可動子と三色の色が一対一で対応していると,カラーセンサにより絶対検出が可能となる,といったメリットを有する.しかしその反面,色情報から位置情報への変換は事前に獲得したマッピングデータを基準に行われるため,経年劣化や外乱により,マッピングデータを取得した時の環境と少しでも実験環境が異なると,そのずれが位置情報の誤差として生じるといった問題があった.そこで本年度は色エンコーダ方式の検討を行う.具体的には位置に対してアナログで行っていた色付けを,デジタルな色づけへと変更する.そして位置情報への変換は,従来のエンコーダの様に,直前に検出した色からどのように変化したか,という相対的な情報を用いる.この手法へ変更することにより,マッピングデータが不要となる,可動子の色分けを荒くできるため,より簡易的な三自由度位置センシングが可能になるといったメリットがある.しかしながら,相対検出となるため,累積誤差がどの程度発生するかなど検証する必要がある. 多自由度球面電磁アクチュエータについては,磁気差動結合を用いた二自由度アクチュエータの検証を行う.差動結合とは自動車のディファレンシャルギアに用いられる機構であり,車両カーブ時の左右の車輪の回転数の差を吸収するものである.この入力と出力の関係を入れ替えることにより,簡素な機構で多自由度駆動を実現することが可能である.本年度はこの新構造アクチュエータの実現可能性を,三次元有限要素法を用いたシミュレーションと,実機検証により確認していく.
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