研究課題/領域番号 |
14J00793
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堺谷 洋 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 二自由度アクチュエータ / デフギア / 三自由度位置センシング / カラーセンサ |
研究実績の概要 |
本年度は,従来機器で制御可能な差動結合式二自由度アクチュエータの提案,シミュレーションによる性能検証と,三自由度位置センシング手法である,カラーエンコーダ方式の提案および,試作機の作成,簡易モデルによる評価を行った。 現在までに開発されてきた多自由度アクチュエータは,複雑な可動子磁石磁界と同期させるために,固定子で多くのコイルを用いて,それらと同期するような磁界を生成していた。これまでにアウターロータ型の採用により,従来のモデルと比較して高トルク化が達成できたものの,コイルを多く有するため制御機器が大型化してしまい,結果としてシステムの小型化を達成できていないという,新たな課題が見えてきた。そこでその課題を解決するために,デフギアの原理を応用した差動結合型アクチュエータの提案を行った。デフギアとは,自動車に搭載されている,カーブ時の左右の回転数の差を吸収する機構であり,この入力と出力を入れ替えることによって,従来の制御機器を用いて駆動可能な二自由度アクチュエータが実現可能である。構造提案から,アクチュエータの基本原理の確認,補助ヨーク追加による磁気回路の改善及び,その性能をシミュレーションにより確認した。 可動子の位置センシングに関してはカラーセンサを用いた手法を提案してきた。本年度は可動子にデジタルに色付けを行うカラーエンコーダ方式の検討を行った。まず,簡易な形状である平板で、デジタルに色付けした可動子の作成,及び,その色情報の評価を行った。その後,球面上の可動子にデジタルな色付けを施した。 今後は新しく提案したアクチュエータの実機検証及び,色情報を用いた三自由度位置センシング手法の評価を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二年度はカラーセンサを実装し,三自由度アクチュエータを試作する予定であった。しかしながら研究を進める上で,カラーセンサが精緻な位置検出には向かないということ,そして多自由度システム全体として考えた時の,三自由度アクチュエータの課題が見えてきた。そこで本年度はそれらの課題を踏まえて研究を行う必要があった。 まず三自由度位置センシングに関しては,カラーセンサと9軸センサを組み合わせる手法を検証した。カラーセンサのエンコーダ方式に加えて,9軸センサをアクチュエータに搭載し,実際に検証することで,それらを組み合わせるという新たなセンシング手法が見えてえきた。 多自由度アクチュエータに関しては,コイル相数の増大という問題点に着目し,従来制御機器を用いて制御可能な二自由度差動結合式アクチュエータの提案を行った。提案したアクチュエータは従来の三相インバータを二つ用いて駆動可能であり,駆動角度に制限があるため減速機を搭載することはできないものの,制御上の特異点が存在せず,部品点数を削減できるというメリットを有する。提案アクチュエータはロボットの眼球や,照明装置などのアプリケーションへの応用が期待できる。またこれらの成果は国際学会で発表され,論文誌掲載という形で評価されたことからも,世界に対して,その研究の意義を示すことができた。 以上により本課題の研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は二自由度差動結合型アクチュエータの実機検証および,カラーセンサと9軸センサを用いた三自由度位置センシング手法の開発を進める。 従来の多自由度アクチュエータと比べて,提案した差動結合式二自由度アクチュエータは簡易な制御機構で二自由度駆動が実現可能である。可動範囲の制限があるため,減速機を搭載できず,モータとギアの組み合わせに比べて,多自由度アクチュエータのトルク密度は低い。しかしながらロボットの眼球や照明装置といった比較的低いトルクで駆動する用途に対して,多自由度アクチュエータは良好なアプリケーションとなり得る。多自由度アクチュエータの実現可能性を探るため,今後はアクチュエータを試作し,性能検証を行っていく。 位置センシングに関しては,実機によるカラーエンコーダ方式の検証,及びカラーセンサと9軸センサを組み合わせたセンサフュージョンの有効性確認を行っていく。色情報を用いることで従来では困難であった三自由度の位置センシングが可能となる。しかしながら,現在までの実験結果では,カラーセンサを用いても精緻なセンシングはできていない。そこでカラーセンサに加えて、速度,加速度,地磁気を検出する9軸センサの組み合わせを検討する。大まかな絶対値情報はカラーセンサで検出し,細かな角度を9軸センサで検出することによってセンサ同士の欠点を補いあえるような位置検出が可能になると予測される。
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