研究課題/領域番号 |
14J00794
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
前田 拓樹 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / pH応答性 / 蛍光プローブ |
研究実績の概要 |
破骨細胞は、我々の体内で損傷・老朽化した骨組織を除去する役割を担っている。この機能により骨組織の恒常性が保たれているが、関節リウマチなどの骨疾患部位では、破骨細胞機能に異常をきたしている。そのため、破骨細胞機能の解明は、疾患原因の解明や治療薬開発に重要であると考えられる。しかし、近年汎用されている組織切片を用いた組織学的手法では、破骨細胞による骨吸収をin vivoで解析することができない。現在、X線CTや蛍光プローブを用いた、in vivo解析が可能なツール開発が進められているが、細胞レベルでの破骨細胞活性解析は不可能である。そこで、本研究では、生きたマウス体内の破骨細胞活性をリアルタイムに解析することが可能な機能性蛍光プローブを開発した。開発したプローブは、光安定性の高いボロンジピロメテン色素誘導体を母骨格とし、骨組織に強く結合するビスホスホネート基と、光誘起電子移動によるpH感受性蛍光スイッチ機能を有している。これらの特性により、プローブは骨組織へと選択的に送達され、活性化破骨細胞が骨吸収時に形成する酸性領域を選択的に可視化できる。 開発したプローブをマウスに投与し、二光子励起顕微鏡で観察を行ったところ、破骨細胞の活性化に伴うプローブ蛍光の増大が確認され、骨吸収を細胞レベルで追跡可能であることを明らかにした。また、本手法を用いることで、in vivoにおける定量的な細胞活性評価と、酸性領域の局在変化の可視化に成功した。In vivoにおける破骨細胞活性変化をリアルタイムに解析した例は、過去に存在せず、本研究で得られた新たな知見は、破骨細胞機能を解明する上で、非常に有益なデータであると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、従来法では不可能であった、破骨細胞の骨吸収の定量評価、リアルタイム解析を可能とするイメージング技術の開発に成功した。この手法を用いることにより、薬剤投与による破骨細胞活性変化の定量的解析や、時間経過に伴う酸性領域の局在変化を観察可能となり、破骨細胞機能を解明する上で、非常に重要な知見を得ることができた。この研究成果は、骨代謝に関する生命現象の解明を進める上で非常に有意義であると言え、骨疾患原因の解明、治療薬開発等へと繋がると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
プローブの汎用性を向上させるため、長波長蛍光を有するプローブを開発する。これにより、既存の様々な蛍光タンパク質と蛍光プローブを組み合わせることが可能となる。破骨細胞内部に存在する特定のタンパク質を蛍光タンパク質によってラベル化し、蛍光プローブによる細胞活性検出法と組み合わせることによって、さらなる研究展開が期待できる。また、骨形成細胞である、骨芽細胞の活性を検出するための、新たなプローブ開発を進める。
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