研究課題/領域番号 |
14J00822
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中西 大輔 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 空気圧人工筋肉 / McKibbne型空気圧アクチュエータ / 安定性解析 / 周期運動 / 関節剛性 / 筋骨格構造 |
研究実績の概要 |
本研究では,McKibben型空気圧アクチュエータ(以下MPA)を用いたロボットの解析を通じて,二足歩行ロボットの身体ダイナミクスベースト制御理論の構築,および人間の歩行メカニズムの解明を目指している.これに対して今年度,申請者は(1)MPAのモデル化に向けた測定実験,(2)MPAを用いた脚ロボットの関節剛性の特異点に関する解析,(3)MPAを用いた脚ロボットの任意の周期運動に対する圧力入力設計法の構築,以上の三つのテーマに重点を置いて研究を行った. (1)では,動的特性を含むMPAのモデル化に向けて詳細な測定実験を行った.その結果,MPAの張力を,長さ,収縮速度を独立変数とする平面として表現可能だとわかった.さらにその係数が圧力の関数であり,MPAの張力を長さ,収縮速度と圧力を変数とするシンプルなモデルで表現可能であることを示唆しており,解析用のMPAモデルの構築に向けて大きな手がかりとなる. (2)では二自由度の脚モデルの解析を行っている際に発見した関節剛性の特異点について行った研究である.特異点とは,これよりも高い(立ち上がった)姿勢領域においては圧力入力と関節剛性の定性的な関係が逆転する点,すなわち力む程に関節剛性が下がる点のことである.この領域では,圧力入力を高めすぎると姿勢が不安定化する恐れがある.この知見は,従来経験的に決定されてきた入力設計に,解析による指標を与える第一歩であると言える. (3)では,正弦波の重ね合わせで運動を表現することで,幾何的に実現可能であればそれを達成するような圧力入力を設計することが可能であることを解析,および実機検証によって示した.これにより,従来試行錯誤で決定されていた圧力入力を数理的に設計することが可能になると考えられる.これは今後歩行などの複雑な運動などを考える上で非常に有益である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画では,(1)上半身を有する脚モデルに関する安定性解析および実機検証, (2)MPAを用いた二足歩行ロボットの解析的な設計論の構築,また(3)上半身を有する二足歩行ロボットの制作を開始する予定であった. (1)については,前年度の予定であった二自由度脚モデルに対する解析の結果を拡張する予定であった.二自由度脚モデルについては,解析とシミュレーションが概ね達成されており,続いて上半身を有するモデルに対して解析を行う準備はできている.しかし二自由度脚モデルの解析の過程で発見した,「関節剛性の特異点」を先に研究する方が重要であると考え,研究計画を一部変更し,今年度はこちらについて重点を置いて研究を行った. (2)については,先に述べた通り任意の運動を実現する圧力入力設計法を構築した.上半身を有するモデルについてもこれを拡張する形で対応できると考えられる.よって,これについては概ね順調であると考えられる. (3)については,(1)(2)に注力したためにまだ着手していない. これらを総合すると,当初の予定に照らし合わせるとやや遅れていると考えられる.しかし,予定に無かった新たなテーマやそれに対する知見を得られたことを加味すると,概ね順調であると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず,(1)二自由度脚モデルの実機検証を行い,(2)上半身を有する脚モデルに対する解析および実機検証,さらに(3)二足歩行ロボットの制作および各種歩行実験を行う予定である. (1)については,実際に二自由度脚ロボットを作成し,ここまでの研究結果の妥当性を確認する. (2)については,二自由度脚モデルを拡張する形でモデルを立て,解析を行う.また(1)で制作したロボットを拡張する形で実機を制作,実機検証を行う. (3)については,まず(2)で制作したロボットを拡張,あるいはその知見をもとに新たに歩行ロボットを制作する.そしてまず基本的な歩行実験を行い,その後身体各部の運動が歩行に与える影響について検証を行っていく.
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