平成27年度の主な研究成果として,1)コピュラを用いた2次元混合ワイブル劣化ハザードモデルの開発,2)連続量を用いた劣化ハザードモデルの開発,があげられる.両者ともに社会基盤施設のアセットマネジメントにおける劣化過程の定量化のための確率モデルであり,点検データを用いて統計的に劣化過程を予測するという考え方に基づいている. 2次元混合ワイブル劣化ハザードモデルでは,施設の劣化過程が故障の有無の2値状態で観測されている状況を考える.本モデルの特徴は,施設の劣化速度,劣化加速度の2種類の異質性を推定している点にある.その際,2種類の異質性パラメータのペアが一意に決定されないという問題があった.これに対して,コピュラを用いて異質性パラメータの同時分布を同時に推定することにより,その問題を解決した.2次元混合ワイブル劣化ハザードモデルを用いることにより,施設の劣化過程をより高精度に推定することができる.さらに,異質性パラメータの同時分布を推定することにより,ある施設群の維持管理問題を考えたとき,ある将来時点でどの程度の数量の施設を更新する必要があるかを定量化することができ,維持管理計画策定に対しても重要な情報を提供できるようになった. 連続量を用いた劣化ハザードモデルでは,施設の劣化状況が連続量として観測されている状況を考える.従来,このような連続量は離散化されたのちに,マルコフ劣化モデルなどの推定に用いられていたが,本研究では,連続量を直接用いた劣化予測を可能とした.これにより,観測値の離散化に伴う情報の欠落やバイアスの発生を避けることが可能となり,劣化過程をより詳細に記述できるようになった.さらに,ハザードモデルの枠組みでモデルを定式化することにより,連続量指標の将来時点での分布や余寿命分布など,社会基盤施設管理者の意思決定やインフラ会計に対して有用な知見を提供できるようになった.
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