研究実績の概要 |
第二年度である平成27 年度は高知県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県に加え、小笠原諸島の父島と母島で採集を行い、Reticulitermes 属、Glyptotermes 属、Neotermes 属のサンプルを得た。昨年度のサンプルと合わせて解析を進めたところ同一種であっても繁殖様式に地域間差が存在することが示唆された。また、当該地域に分布が報告されていないシロアリ属のコロニーが複数採集された。これらのサンプルについては昨年度作成したマーカーによる遺伝子解析を進めており、一部のデータについては論文を投稿中あるいは執筆中である。 現在調査対象としているシロアリの中でも、最も研究が進んだ琉球列島に分布するコウシュンシロアリNeotermes sp.では、日本学術振興会特別研究員PD である宮国泰史博士(京都大学大学院農学研究科昆虫生態学研究室)との共同研究により、上述の遺伝子マーカーを用いて単為生殖能力を保持していること、およびそれが末端型オートミクシスであることを確認した(Kobayashi and Miyaguni, Scientific Reports 投稿中)。今後この単為生殖能力の地域変異、および野外コロニーの巣内血縁構造が性投資比にどのように影響しているかを調査していく予定である。 また、新たな発展として性投資比が種間相互作用に及ぼす影響を個体ベースのシミュレーションモデルで解析を行った。その結果、個体群の密度に応じて性投資比が変化することで種の共存が促進されることが判明した(Kobayashi & Hasegawa 2016, Scientific Reports)。性比研究の新たな展開を世界に先駆けて行ったものであり、既に国内の学会等において高い評価を得ている。
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