研究課題/領域番号 |
14J00973
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大久保 将貴 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 介護保険制度 / 介護労働者 / 社会保障 / 離職率 / 早期離職 / 応用計量分析 / 因果推論 |
研究実績の概要 |
(a)幸福度と社会保障支出・税制(ISA World Congress of Sociologyにて報告済) 福祉国家における幸福度は社会保障支出や税制にいかに規定されているかを検証するために国際比較計量分析を行った.分析結果は,社会保障支出と幸福度は正の関連があり,社会保障支出は逆進税が早期に導入された国ほど多いことが明らかとなった. (b)介護職員の早期離職要因(第12回福祉社会学会にて報告済) 介護職員の早期離職要因を分析し以下の3点が明らかになった.第1に,低賃金は離職率を高め,この効果は正規・非正規双方において認められた.第2に,教育・研修状況が離職率に与える影響は,正規・非正規間で異なることが明らかとなった.すなわち,正規職では採用後の継続的な研修が離職率を有意に低下させるのに対し,非正規職では教育・研修状況が離職率を低下させる効果はみられなかった.第3に,2009年に設立された介護職員処遇改善交付金は,使途により離職率への効果が異なっていた.正規職については,介護支援が離職率を低下させる一方,非正規職では全ての項目において離職率を低下させる効果はなかった. (c)介護労働者の賃金決定要因(第59回数理社会学会にて報告済/査読付き学術雑誌に投稿済 ) 介護労働者の賃金決定要因を検証した.従来の期待値を予測する通常の回帰分析では,観測された異常値に影響を受けやすく,分位点ごとに異なる規定要因を考慮できないという問題点があった.この問題を解決するため,本研究では分位点回帰モデルを採用した.訪問介護員と介護職員の双方について分析を行った結果,賃金の決定要因は分位点ごとに大きく異なることが明らかとなった.すなわち,低賃金と高賃金では規定要因が異なり,とりわけ,男性/女性,正規/非正規,介護福祉士保有/非保有者間の賃金格差が大きく,かつ分位点間の差異が大きいことが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画より多くの学会報告と論文投稿の準備を実現した.多くのコメントを頂戴したことで,以降の研究計画が明確となり,また研究実績の実現に結びついた.
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今後の研究の推進方策 |
第1に,既に学会報告を行った研究を論文として完成させ,査読付き学術雑誌へ投稿する.第2に,研究課題として挙げながらも昨年度は取り組むことのできなかった課題に注力する.すなわち,介護報酬改定や介護職員処遇改善加算・交付金といった制度変更が,介護労働者の賃金や働き方の意識に与える因果効果を分析する.
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