研究課題/領域番号 |
14J00995
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
磯田 沙織 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
キーワード | 比較政治学 / 代表制民主主義 / 政党システム / ラテンアメリカの地域研究 / 国際研究者交流 / ペルー / ベネズエラ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、南米諸国の政治において代表制が「危機」に陥った後の変化を比較分析することである。本研究では、1990年代以降に代表制が危機に陥ったと指摘されているペルー・ベネズエラ等の南米諸国を事例として取り上げ、危機に陥った後、代表制の危機は継続したか、あるいは危機的状況を脱したのか検証することを目指している。 平成26年の研究実施計画では、現地調査を実施しながら調査結果を随時まとめて発表する予定であったため、同計画に従い、約3か月にわたりペルーにおいて現地調査を実施した。その結果、インタビュー調査及び国外の研究者等とのネットワーク構築を通じて、事例分析を深めることができた。 1. ペルーの首都リマを中心に、先行研究の収集と、政党関係者、住民組織代表者、抗議活動の参加者等に対するインタビュー調査を実施した。その結果、代表制が危機に陥った後の政治制度の現状と課題に関して情報収集することができた。また、ペルーを訪問中の他の南米諸国の政治アクターに対してもインタビュー調査を実施した結果、比較の観点から予想以上に興味深い情報を得ることができた。 2. 11月にリマで実施された国際学会「選挙研究-ナショナル及びサブナショナルレベルにおける代表制と政治参加-」に参加し、欧米及びラテンアメリカ諸国の研究者とのネットワークを構築した。その結果、国外における最新の研究動向を確認するとともに、著名な研究者等から自身の研究に対して有益なコメントを得ることができた。 また、本研究の意義は、新興民主主義国における民主主義の定着と質という、政治学上重要な理論の一つに実証的な接近を試みている点であり、本研究の重要性は、特定の地域の政治研究にとどまらず、比較政治や民主主義論等の一般理論に対しても示唆を与える点である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究及びこれまでの調査結果をまとめて、日本語・スペイン語による学会発表及び学術雑誌上で研究成果を発表した。 平成26年4月には日本ラテンアメリカ学会にて、パラグアイの政治分析に関して口頭発表した。既に『ラテンアメリカ・レポート』等において断片的な分析を発表していたが、民主化以降20年以上にわたる政治情勢をまとめて分析することで、政治分析が相対的に少ない同国の政治情勢について公表することができた。 9月には、アジア大洋州ラテンアメリカ研究協議会にて、ペルー・ベネズエラ・パラグアイ政治の比較分析に関してスペイン語で口頭発表した。その際、国内外の著名な研究者と意見交換を行うことで、用語の再定義・理論枠組みの修正等の示唆を得ることができた。同時に、スペイン語で研究発表するスキルを向上させたと認識している。 また、所属先大学院が発行する『国際公共政策論集』において、ペルー及びベネズエラ政治の比較研究を発表した。同論文では、1990年代以降の両国における政党システムと政治参加の形態に着目し、代表制の危機との相関に関して議論することができた。 以上の観点から、平成26年度はおおむね順調に研究の進展がみられたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、研究論文及び学会発表等の研究成果の発表に加えて、学術論文の執筆を念頭に置き、研究を推進する。 これまでの先行研究及び調査結果を整理した結果、仮説の若干の修正が求められると判断した。しかし、修正を加えることによって事例分析に即した研究内容となり、理論研究と実証研究の接近が可能となるため、研究上の意義深い進展がみられると考えられる。 また、研究成果をまとめる過程で、一次資料が不足する可能性が想定されるため、短期間の現地調査の実施を計画している。これまでに構築したネットワークを利用して効率的に調査を実施することにより、研究内容に反映させる予定である。
|