プラナリアの摂食行動は、餌を探す走化性、餌の近くで咽頭を伸ばす咽頭伸長、咽頭から餌を取り込む嚥下から成ることが観察から分かった。神経ペプチドの合成酵素の遺伝子Prohormone convertase 2(PC2)のRNAi個体が摂食行動に影響があることから、プラナリアの摂食行動にはペプチド作動性ニューロンの関与が予想された。そこで、候補遺伝子を当研究室のESTデータベースとRoche454次世代シーケンサーによるトランスクリプトームデータベースから、他種のプラナリアで同定されている神経ペプチドとペプチドホルモン遺伝子のDNA配列データをクエリとして用いて探索した。最終的に21個の神経ペプチドとペプチドホルモン候補遺伝子と報告されている3個の神経ペプチド遺伝子計24個を対象にした。摂食行動の解析系を作成し、神経ペプチド遺伝子24個をそれぞれRNAi処理した個体で行動解析を行い、餌を食べるのに後れを取る表現型を持つプラナリアを13候補まで絞り込んだ。この13個の神経ペプチド候補遺伝子について、RNAiでその働きを抑制したプラナリアで咽頭伸長解析系を用いて、咽頭伸長に関与する遺伝子の同定を行った。その結果、5つの神経ペプチド候補遺伝子が咽頭伸長に関与する遺伝子であることがわかった。 咽頭伸長に必要な5つの神経ペプチド遺伝子の発現パターンをwhole mount in situ ハイブリダイゼーションで解析した。その結果、脳を含む中枢神経系、体表面に点在、咽頭前部の腹側など異なる発現パターンが見られた。異なる発現パターンを示す少なくとも5つの遺伝子がプラナリアの摂食行動における咽頭伸長の制御に関わっており、それらの発現パターンからは、咽頭伸長を制御する神経細胞群が複雑な神経回路を形成していることが示唆された。
|