研究課題/領域番号 |
14J01050
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
直田 耕治 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 環拡張ポルフィリン / ポルフィリン / 化学センサー / 交差共役系 / ビラジカル性 / 酸化還元特性 |
研究実績の概要 |
本研究は、ポルフィリンやその類縁体を用いて新しい機能性分子を創出することを目的としている。本年度は前年度に提案した、環拡張ポルフィリンの柔軟な分子骨格に着眼した研究課題(研究①)に加えて、交差共役系ポルフィリンおよび環拡張ポルフィリンのビラジカル性の制御という新しい研究課題(研究②)を提案し、これらの研究を両立して検討してきた。以下に具体的な成果を示す。 研究①:外部刺激に応答して、色を変化させる分子は各種化学センサーとしての応用が期待できる。そこで我々は外部刺激に応じて色を変える、すなわち共役系を変えることができるような分子を目指し、研究を行ってきた。環拡張ポルフィリンの一種であるヘキサフィリンはその巨大な構造に起因して柔軟に分子構造(共役系)を変えることができる。我々はこれらの分子構造を外部刺激によって変化させることができないかと考え、独自の分子設計により、新規にヘキサフィリンを合成した。実際にこのヘキサフィリンは、酸塩基の添加や金属イオンの導入により、共役系の変化に起因した色の変化を確認した。 研究②:交差共役オリゴチオフェンは、共鳴構造としてビラジカル性の寄与を有することから、多段階の酸化還元特性を示し、有機半導体などの有機エレクトロニクス分野で精力的に研究が行われている。本研究ではオリゴチオフェンの1つのチオフェンユニットをポルフィリンまたはヘキサフィリンで置き換えた分子を合成し、交差共役系におけるビラジカル性を検証した。種々の誘導体を合成した結果、ヘキサフィリンにおいて最高13電子が関与する酸化還元プロセスが可能であることが明らかとなり、多電子貯蔵システムとしての応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究①に関しては、分子設計と実際の有機合成に苦労したものの、最終的には標的化合物の合成に成功した。実際に得られた分子は、酸塩基に対する色調変化という当初期待していた性能を示した。一方、金属イオンの添加によって、劇的に構造が変化した点は予想外であり、結果的に、外部刺激の種類によって多くの色調を実現することができた。また研究②に関しては、合成に成功した分子の酸化還元特性が当初の予想を超え、先行研究においてもほとんど例が見られないほどの性能を示すことが明らかとなった。以上のことから、本年度の研究は当初の計画以上に進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、環拡張ポルフィリンの剛直性(金錯体)と柔軟性(研究①)を活かした新規機能性分子の創出という課題は概ね終了したと言える。今後の研究では研究②のように、環拡張ポルフィリンの1つの物性を従来よりも向上させることを目的として展開する予定である。具体的にはその酸化還元特性の更なる性能向上を目指し、ヘキサフィリンに金属イオンや別のπ共役分子を導入することで、この課題を解決できるのではないかと考えている。また酸化還元特性を活かし、有機半導体や電池材料などのデバイスへの応用を見据えた研究も同時に行っていきたいと考えている。
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