研究実績の概要 |
本研究の目的は,相互行為的観点から対人関係の調整行動について明らかにすることである.相互行為的な観点とは,人々が会話やそのほかの「やりとり」を行う際,参与者のどのような行動によってその直後の行動が可能になったか,またどのような立ち位置でやりとりに参加しているか,といったことに主眼をおき,参与者にとって理解/利用可能な要素を記述し,やりとりの諸相を分析することである.こうした手法をとることにより,性別・年齢・国籍などの外面的な要素を前提とせず,当事者にとって何が重要であるかを追うことができる.対人関係はしばしばそのような外的要因ではなく,局所的な関係に関わるアドホックな位置取りが関わっており,こうした観点は有効である. このような問題意識に基づき,2014年度には新たに,継続的に活動する非公式なサークルのデータ収録を開始し,すでに30時間程度の映像データを蓄積した.このデータを用いた研究として,第35回社会言語科学会研究大会(2015/3/14-15, 東京女子大学)において研究発表を行った.この発表において申請者は.多人数の会話が行われる状況において,ひとりの説明者が「説明」を行っている時,それに応接して別の参与者が「冗談を言うこと」の相互行為的機能を分析した.申請者はこうした「冗談」は,それに続く位置においてさらに別の参与者の「関与」を呼び込む機能があると分析し,こうした「関与」が可能になることや実際に行われることが場のラポール形成に影響しているとの考察を行った.
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