研究課題/領域番号 |
14J01101
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平塚 龍将 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | 細孔表面ラフネス / 極低温He昇温脱離法 |
研究実績の概要 |
1) 吸着エネルギー分布の簡便な測定を可能にする新規He-昇温脱離(Temperature Programmed Desorption, TPD)測定装置の立ち上げおよび実験条件の最適化,さらには,2) 量子効果を考慮したシミュレーションコードの開発およびラフネスの程度とHe吸着エネルギー分布との対応付け,を行う計画であった。 1) 極低温下においてHe分子をサンプルに吸着させた後,昇温により脱離させ質量分析計によりその脱着量を計測する,新規He-TPD測定装置が完成した。1 nm程度の細孔表面ラフネスを有することが知られている規則シリカ多孔体MCM-41に対し実際に測定を行ったところ,大きなノイズは含むものの,物理吸着に由来するTPDカーブが観測されることを確認できた。 2) 1つのHe原子を複数のビーズとバネで表現することにより,He原子の量子効果を加味したシミュレーションコードを構築した。また,Heによる検討に先駆け,同じ希ガス種であるNe,Ar,Krについて分子シミュレーションを行い,吸着エネルギー分布と細孔表面ラフネスとの相関について検証した。異なる程度のラフネスを持つシリカ表面にArを吸着させ,吸着エネルギーを計算したところ,ラフネスの程度が大きなものほど高い吸着エネルギーを持つ割合が増えることがわかり,やはり吸着エネルギー分布の測定によりラフネスの程度が同定可能であるということを確認できた。また,ラフネスの程度を固定したシリカ表面においてNe,Ar,Krの吸着エネルギーを計算したところ,分子径が小さいものほど,高い吸着エネルギーを持つ割合が増えることがわかった。これは,より微細なラフネスを検出するためには,より小さなプローブ分子が適切である,ということを示しており,やはりプローブ分子には最も小さな希ガスであるHeが最適であるということを確認することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)新規He-TPD装置の設計・開発・立ち上げは完了したものの,実際の実験により得られる観測TPDカーブに大きなノイズが見られるなど,吸着エネルギー分布を得るための解析に耐えうるデータが得られておらず,計画で予定していた実験条件の最適化の達成には至っていないため。 2)He原子の強い量子効果を適切に表現するためには多くのビーズが必要になる上,多数の固体表面原子との相互作用の計算が必要となる吸着シミュレーションの遂行には莫大な計算コストがかかり,現在具体的な計算結果が得られていないため。
|
今後の研究の推進方策 |
1)現在行っている極低温He-TPD実験の実験条件の最適化を完了させる。さらには異なる昇温速度において実験を行い,得られた複数のTPDカーブの解析により,実際に吸着エネルギー分布を測定する。 2)stagingやbisectionと呼ばれるバネのサンプリングを効率的に行う技術や計算の並列化をシミュレーションコードに適用させることで,吸着シミュレーションの高速化を実現する。また,構築したシミュレーションコードを用いて,細孔表面ラフネスの程度とHe吸着エネルギー分布との対応付けに取り組む。
|