研究課題
前年度に引き続き、重い電子系超伝導体CeCu2Si2の超伝導対称性の研究を行った。CeCu2Si2の超伝導は反強磁性量子臨界点近傍で発現することから、スピン揺らぎを媒介とした対形成を行うと考えられており、長らく異方的d波超伝導体であると考えられてきた。しかし我々は最近、重いフェルミ面からの準粒子励起に敏感なプローブである比熱測定、軽いフェルミ面からの準粒子励起に敏感なプローブである熱伝導率測定と磁場侵入長測定(東大グループによる共同研究)を行った結果、これまでとは一転、いかなるフェルミ面においてもノードが存在しないフルギャップ超伝導であることを明らかにした。さらに同一試料における不純物効果の実験から、CeCu2Si2の超伝導はギャップ関数に符号反転のある超伝導体と比べて非常に強いことがわかった。以上より、我々はCeCu2Si2がフルギャップのs++波超伝導であることを明らかにした。このことは強いクーロン斥力にも関わらずオンサイトで対形成することを意味しており、これまでの非従来型超伝導に対する理解を覆す結果となった。また我々は、量子スピン液体Pr2Zr2O7の研究も行った。この系では局所容易磁化軸方向のスピン反転が分化して出来た磁気単極子励起、局所容易磁化軸に垂直な方向のスピンの量子揺らぎに起因する電気単極子励起に加え、それらを媒介するゲージ場の揺らぎであるemergent photon励起が発生すると理論的に提唱されている。しかしながら、後の2つの励起に関しては未だ実験的な研究結果は報告されていない。そこで我々はこの系の素励起を調べるため、低エネルギーの準粒子励起に敏感な熱伝導率測定を行った。その結果、熱伝導率の温度依存性が特徴的な振舞いを示す三つの温度領域があることがわかった。各温度領域での磁場依存性の結果も踏まえ、我々は上記三種類の準粒子励起を各々観測したと考える。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of the Physical Society of Japan
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Nature Communications
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