研究課題
当該研究者は昨年度末にドイツの強磁場施設においてFeSeの熱伝導率及び熱ホール効果の測定を行った。本年度はその測定結果について議論を行い、FeSeの超伝導相の低温高磁場領域で熱ホール角が異常を示すことを明らかにした。このことはその磁場領域で準粒子の散乱メカニズムが変化していることを示しており、そこに明確な相転移があることを強く示唆している。この異常な超伝導相の一つの候補として、n>1以上の高いランダウ準位に起因したFFLO状態が挙げられる。この結果について当該研究者は日本物理学会で口頭発表行った。また論文を執筆し、JPSJ誌に論文が掲載された。また本年度は新たに断熱法による比熱測定のシステムを立ち上げ、FeSeおよびそのS置換系の低温・磁場中での比熱測定を行った。FeSeにおいて、高磁場領域では比熱が磁場に対してスーパーリニアな振る舞いを見せ、この系ではPauli対破壊効果が非常に強いことが明らかとなった。超伝導ギャップ構造についてはFeSeおよびFe(Se,S)のいずれでもマルチギャップ的な振る舞いが観測された。FeSeにおいては、小さいほうのギャップは上部臨界磁場が4 T程度と上記の熱ホール効果の測定とコンシステントな結果が得られた。一方で、S置換していくと小さいほうのギャップが急激に抑制されていく振る舞いが観測され、ドール量x = 0.13付近で1 T程度にまで小さくなっていることが分かった。このことは鉄系超伝導体の超伝導発現機構を解明するうえで非常に重要であると考えられ、またx = 0.17付近にあるネマティック量子臨界点との関係も非常に興味深い。この結果に関しても日本物理学会で報告を行っている。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (15件)
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