研究実績の概要 |
①M. lotiの転写因子による人工遺伝子発現制御 我々は、2つの転写因子nifA2, rpoN2を同時にIPTG誘導できるようにするため、lac promoterの下流にこれらの遺伝子を組み込みオペロン化し、その領域を組み込んだpLAFR1プラスミドを構築した。さらに窒素固定タンパク質ニトロゲナーゼの活性中心の合成に必要なホモクエン酸は、野生型のM. lotiでは合成されないため、ホモクエン酸シンターゼ遺伝子を土壌細菌Azotobacter vinelandiiからクローニングし、相同組換えによりM. lotiのゲノムに挿入した。 まず、我々は2つの転写因子を誘導的に発現できるようにするため、両転写因子遺伝子の上流にIPTG誘導可能なlac promoterを組み込んだ。これにより、2つの転写因子がIPTGにより発現誘導できることが示された。さらに、これらの転写因子により制御される窒素固定関連遺伝子群の発現も調べるため、プロテオーム解析を行った。すると、窒素固定に関わるnif遺伝子群のタンパク質が数多く同定された。これにより、M. lotiの窒素固定遺伝子が非共生状態でも誘導可能であることを示した。今後は、それらを用いて実際にアンモニア生産に適用させることを予定している。 ②M. lotiの共生時特異的な植物ホルモンの生産 根粒菌のメタボローム解析の結果、根粒菌が植物ホルモンであるジベレリンを合成していることを発見した。加えて、各酵素群の機能解明を行い、合成経路を同定した。さらに、根粒菌のジベレリン合成遺伝子破壊株を用い、植物生理学的な実験を行った結果、根粒菌の合成するジベレリンが宿主植物の根粒数を負に制御することを見出した。現在はさらに解析を進め、根粒菌由来のジベレリンがどのようなシグナル伝達系で植物表現型に影響を与えているかを検証中である。
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