①Mesorhizobium lotiの転写因子による人工遺伝子発現制御 これまでの研究の成果から、我々はM. lotiの共生状態特異的な転写因子である、nifA2(mlr5837)とrpoN2(mll5872)に着目し、これら二つの転写因子を試験管培養下でも誘導発現させることにより、M. lotiのタンパク質発現が共生状態に近づけた。2つの転写因子を同時にIPTG誘導できるようにするため、lac promoterの下流にこれらの遺伝子を組み込みオペロン化し、その領域を広域宿主プラスミドpLAFR1に組み込んだ。さらに窒素固定タンパク質ニトロゲナーゼの活性中心の合成に必要なホモクエン酸合成のため、ホモクエン酸シンターゼ遺伝子nifVを土壌細菌Azotobacter vinelandiiからクローニングし、相同組換えによりM. lotiへのゲノム挿入を試みた。この状態でニトロゲナーゼの中心酵素NifHが発現することをウェスタンブロッティングにより確認し、さらに、その他の窒素固定関連遺伝子20種類以上が発現していることもプロテオーム解析により確認した。ただし、外的に導入したnifVは発現せず、結果としてニトロゲナーゼ中心錯体が形成されずに根粒菌が窒素固定能を示さなかった。 ②M. lotiの共生時特異的な植物ホルモンの生産 根粒菌のメタボローム解析の結果、根粒菌が植物ホルモンであるジベレリンを合成していることを発見した。加えて、各酵素群の機能解明を行い、合成経路を世界で初めて同定した。さらに、根粒菌のジベレリン合成遺伝子破壊株を用い、植物生理学的な実験を行った結果、根粒菌の合成するジベレリンが宿主植物の根粒数を負に制御することを見出した。現在はさらに解析を進め、根粒菌由来のジベレリンがどのようなシグナル伝達系で植物表現型に影響を与えているかを検証中である。
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