研究課題/領域番号 |
14J01177
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
渡辺 裕美 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 日本語音声教育 / 評価 / 発音 / 母語話者教師 / 非母語話者教師 / 日本人評価 / 日本語学習者 / ロシア語母語話者 |
研究実績の概要 |
本年度は、教師による日本語学習者の「語」の発音に対する評価に関する検討(研究1)および日本語学習者の自己評価に関する検討(研究2)を中心に実施した。 研究1の目的は、教師(日本人教師とロシア人教師)による発音評価と一般日本人による発音評価の間に差が見られることを示した渡辺・松崎(2014)の結果を受けて、評価差が生じる要因を検討することであった。発話思考法を用いて日本人教師とロシア人教師による発音評価の視点を分析した結果、意味に注目するかどうかという点や、教授経験や学習経験によって生じた感覚的視点あるいは分析的視点があるかどうかという点が評価に影響していることが示された。 研究2の目的は、日本語学習者(ロシア語母語話者)の発音に対する自己評価をモデル音声がある場合とない場合について検討することであった。初級日本語学習者を対象に自己評価を分析した結果、モデル音声がある場合でも自己評価が正しくできない発音特徴があることが示された。 本研究の意義および重要性は、日本語学習者の発音に対する評価を4者の評価、すなわち「一般日本人」「日本人教師」「非母語話者教師」「学習者」の評価に焦点をあてている点にあると言える。こうした多角的分析をもとに、今後、音声教育における指導の指針の提案を目指す。なお、これまでの研究成果をもとに、ロシア語圏(ロシア連邦、キルギス共和国)の日本語教育機関において、日本語学習者や日本語教師を対象に講義を実施し意見交換を行った。それにより、研究成果をより発展的な研究につなげていくための示唆を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、まず収集済データの分析および学術論文の執筆に注力した。論文執筆過程で、「語」に対する評価に関して、評価差の要因を分析するための質的な調査が必要であると判断した。当初の計画では発音評価尺度作成したうえで評価基準を検討する予定であったが、評価の視点や評価基準の検討を掘り下げるため、発話思考法を用い質的データを収集し分析することにした(研究1)。今後は、研究1をふまえたうえで、予定していた「文」の発音に対する評価データの収集と分析を行う。 研究2の日本語学習者(ロシア語母語話者)の発音に対する自己評価に関しては、データ収集、分析ともに順調に進めることができた。さらに、データ収集時には次年度の「文」評価で用いる評価音声の録音も行った。以上より、本年度の達成度はおおむね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
日本語学習者の「文」の発音に対する評価データを収集し、これまでの「語」の発音に対する評価の知見をふまえたうえで、日本語学習者の発音に対する評価をより多角的に検討する。学習者の自己評価データに関しては、引き続き、上級学習者まで幅広くデータを収集し、学習者のレベル別に検討していく。データを収集後、随時、各研究の成果をまとめ発表していく予定である。
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