研究課題/領域番号 |
14J01188
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴木 彩香 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 属性叙述/事象叙述 / 個体レベル述語/場面レベル述語 / 状態性 / 習慣文 / イベント量化/個体量化 / 主格目的語 / 評価/所有 / 第四種動詞 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度得られた結果を深化・発展させるとともに、予定されていた構文の分析にも着手した。 具体的な成果としては、以下の三点を明らかにした。 1.日本語の習慣文に見られるようなル形とテイル形の対立を、より形式的に扱うための枠組みを提案した。前年度まではこの対立を、属性叙述文を形成する形式と事象叙述文を形成する形式の対立と捉えてきたが、英語の習慣文に対する先行研究の分析をもとに、習慣文における属性叙述と事象叙述の対立は「個体量化」と「イベント量化」という量化の違いに還元できることを明らかにした。 2.主格目的語をとる状態述語と対格目的語をとる非状態述語の違いを、個体レベル述語と場面レベル述語の対立としてとらえるとともに、主格目的語をとる状態述語にも二種類が存在することを明らかにした。主語のみならず目的語も総称解釈のみを受ける述語は「評価系述語」、目的語の存在解釈が許される述語は「所有系述語」として区別するべきであり、所有系述語は内部に場面レベル述語を含む複合的な構造をとっている述語群であると特徴づけることができる。それに対して、評価系述語に属する語群は目的語も時空間的に位置づけることのできない純粋な個体レベル述語である。 3.第四種動詞と呼ばれる必ずテイル形で用いられる動詞に関して、主語名詞を総称名詞にした場合にはル形が可能になる語群が存在することを指摘した。こうした語群に目を向けることによって、語彙的アスペクトを扱う体系と文の総称的コンテクストを扱う体系を統合して考えることの重要性を明らかにした。 1の成果は言語学会150回大会において口頭発表を行い、現在査読中ではあるが論文での発表も予定している。また、2の成果に関しては関西言語学会41回大会での発表が予定されており、3に関しても今年度中の学会発表を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度の成果をもとに国内学会等で口頭発表を行い、その際に得られた批判やアドバイスをもとに、これまでの議論をより形式化、および発展させることができた。扱う現象自体が大きく増えたわけではないが、属性叙述という文全体の叙述のあり方をより構成的に分析するという本研究の目的のためには必要なプロセスであったと言える。また、予定されていた第四種動詞の分析にも着手することができ、次年度の体系化に向けておおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、これまで得られた成果を統合し、博士論文としてまとめることを目指す。ここまでの研究の成果からは、テイル形という文法的な状態化形式が対応するル形やダ形と違って属性叙述文を形成することができないということが明らかになった。しかし、今後はこれまで扱った以外の用法にも現象を広げ、3形式と叙述の型の決定の関係を体系化させていく必要がある。テイル形に関して言えば、対応するル形が存在しない第四種動詞や、「経験」と呼ばれる用法についての言及は課題となる。また、ル形に関しても、習慣文の分析において非状態動詞がル形で現れた場合にはアスペクト強制が起こると考えられるが、非状態動詞と状態動詞を区別して体系化する必要があると考えられる。「このせっけんはいい匂いがする。」のような知覚動詞の持つ状態性も含めて体系化することを予定している。
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